鶴 ページ23
公演が終わった。3時間弱という、少し長い公演だったが、司咲には少し短く感じた。そのくらい楽しかった、ということだろうけれど。
隣のつばさに手を掴まれて、司咲はその手を振り払った。行き先は同じようで、無理矢理一緒に楽屋へと向かった。
「最悪。ほんっと最悪」
「まあまあ」
「あなたのせいですよ」
キッと睨みつけて司咲はスタスタと歩いて行く。その瞳が彷徨っているのを見て、つばさはひとつの扉を開いて司咲を手招きした。
「…ありがとうございます」
嫌いだと思っていても、司咲は何かをしてもらって礼を忘れたことはない。それが彼女の性格だった。
中ではまだ刀剣男士の格好をしたキャストが和気藹々と戯れていた。仲が良さそうで、その中に基裕だけがいなかった。
「あれ、もしかしてもっくんさんのお知り合いですか？」
「えっ？」
「崎山さんと一緒なので。崎山さん、はじめまして」
はじめまして、と返すつばさ。2人が相見えたのはこれがはじめてだった。
真っ白の衣装に身を包んだ彼は大きな瞳で微笑みながら司咲を見つめている。
「あ、えっと…。鶴…つる……ええと…」
「鶴丸国永」
ぽん、と頭に大きな手が乗って、司咲は振り向いた。探していた基裕がいて、司咲は自然と笑顔になった。
「基くんっ！」
基裕が現れた途端に司咲は嬉しそうだ。
「もっくんさんの彼女？」
「いや、違う。俺の妹みたいなものだよ」
「みたいな？」
首を傾げる彼に基裕は司咲の髪を撫でながら笑った。
「血は繋がってないからね。けど、俺はこの子が5つの時から知ってるよ。早い話、幼馴染みってところかな。出会った時、俺は幼くなかったけど」
周りに集まってその話を聞いていた刀剣男士の面々はとても優しい笑顔をしていた。
「鶴丸国永役の岡宮来夢です」
「明石国行役の仲田博喜です」
「御手杵役の田中涼星です」
「籠手切江役の田村升吾です」
「蜻蛉切役のspiです」
よろしく、と手を差し出してくる面々に司咲は俯きがちに1人1人と握手をした。
「本庄司咲です！基くんがお世話になってます！」
バッと頭を下げた。
「てことは、つばさの彼女？」
spiの言葉に司咲は思いっきり嫌そうな顔をした。
「えっ！そうなの？」
わざとらしく驚いた表情をする基裕をキッと睨みつけた。
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年6月29日 15時
