もしも、運命なら… (ページ21)

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イヤホンページ21

やはりどうしても、関わらないでという言葉の裏に助けて、という言葉が隠れているような気がする。彼女のことは何も知らないのに、なんとなくそう思った。

本当は夕焼けが好きなのに、隠そうとしたり、冷たい態度を取るのは本当につばさのことが嫌いだからなのだろう。

つばさは踵を返して歩き出す。

好きな人に嫌われる。それがこんなに辛いとは思わなかった。胸が張り裂けそうな想いにただ苦しむばかり。

それでも、たとえ恨まれても司咲のことを助けたいと思ってしまう。何があそこまで拒絶させるのかは分からないけれど、他の誰でもないつばさが彼女を救い出したい。

司咲に掴まれた二の腕をそっと撫でた。

「変態か」

自嘲して、夜空を見上げた。

8月14日。

あれからつばさと会うことはなく、司咲はホッとしていた。

耳にイヤホンをつけて、司咲は大好きな阪本奨悟の音楽を流す。

彼女の持っているCDは全て阪本奨悟。iPodの中身も阪本奨悟オンリーだった。

司咲には一生経験できないであろう甘い恋の歌や、聞いているだけで元気になれるような歌。司咲は彼の歌を聞くと少しだけテンションが上がるのだ。

俳優もやっているみたいだけど、彼の芝居は見たことがない。司咲が好きなのは彼の歌なのだ。

ピコン、とメッセージが届いて、司咲はスマホを開いた。それは言わずもがな基裕からだ。

『司咲、公演終わったら楽屋においで。一緒にご飯食べよう』

そのメッセージに司咲は頬を緩めた。

『行く！』

そう返して会場へと向かって歩き出した。天王洲銀河劇場なので、東京都内とはいえ少しだけ遠い。車の免許を持っていないので、司咲は電車で行く。

今日もやはり人に紛れて霊が彷徨っている。とにかく目を合わせないように俯いた。彼女には本当に鮮明に見えてしまうから、人と霊の区別が正直なところあまりできていない。よく見ないとそれが霊なのか人なのか判別できないのだ。

途中乗り換えたりしながら、やっと会場にたどり着いた。開場していたので、チケットを持って入場すると、自分の席を探し出して座る。両隣はまだ空いていて、少しだけホッとした。

『関係者席』というところなのだろう。なんだかそわそわして、音楽の音をひとつあげた。みんなが嬉々として待っている。みんな、刀剣乱舞のファンなのだろう。笑顔が輝いていた。