夕焼け ページ11
呑気に問いかけてくる彼を軽く睨みつけた。
「俺は好きだよ。神社検定取るくらいだからね」
何も言わない司咲の反応なんて眼中にないのか、ずっと話しかけてくる。
神社が好きか嫌いかと問われれば、好き、と答えるだろう。神社は唯一の避難場所だから。
チラリと後ろを向くが、まだあの霊は騒いでいた。その姿がやはり恐ろしくて、仕方がないから彼の話に耳を傾けることにした。
「司咲ちゃん、カレー好き？」
「……は？」
さっきまで神社の話をしていたと思ったのに、いきなりカレーの話になるからつい反応してしまった。
「やっと返事してくれた」
そう言って優しく笑うから、司咲はため息を吐いた。
「なんなんですか。もうやめてください。私に関わらないで」
「……でも、司咲ちゃん」
言いかけたつばさの言葉を遮って、半ば叫ぶように言葉を被せた。霊の喚く声にイライラしてしまっていたのかもしれない。
「どうせ、信じたって無駄なんですよ！みんな私から離れて行く！だから関わりたくないの！」
立ち止まって、キッと睨みつける。
「もう、ついてこないで」
すたすたと歩いて行く司咲はやはり悲しみ苦しんでいるのだと確信してしまった。
「司咲ちゃん。スマホないのに1人で帰るのは危ないよ。送るよ」
「結構です。私はしばらくこの敷地からは出られないので」
「いいよ。今日仕事休みだから何時まででも付き合うよ」
つばさは司咲の悲しげな瞳を見つめた。
「俺は離れていかないよ。司咲ちゃんはもう、俺の大切な友だちだから」
「バカ言わないでください。友だちになった覚えはありません」
「俺はそう思ってる」
司咲はため息を吐いて反論するのを諦めた。
どうしてここに逃げ込んでしまったのかと自分を呪った。空を見上げると、もう随分日が傾いてきていた。
「…あ」
沈む太陽の周りをオレンジが美しく象っている。少しだけ頬が緩んだ。何も考えずに眺めていられるこの黄昏の夕焼けが司咲は好きだった。
無意識下の笑顔につばさも柔らかく微笑んだ。彼女の視線の先の夕焼けをカメラに収めた。
「司咲ちゃん。この写真あげるから連絡先交換しよ」
「嫌ですよ」
「夕焼け好きなんでしょ？夕焼け見て笑ってたから」
「……別に」
その時、一際甲高い悲鳴が聞こえた。
「…うっ」
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作者名：星ノ宮昴 | 作成日時：2021年6月29日 15時
