全部、君のせい

交渉成立 ページ5

そんな野良猫さんとの長くなりそうな交渉に
隣に腰をおろして、持っていたビニール袋を漁る。





「アイス好き？」


『なに急に』


「好き？」


『まぁ、好き、だけど…』





その脈絡のない突然の質問は
彼女の警戒心を何故かさらに煽ってしまったらしく
少し距離を取られた。


苦笑しながら
「はい、ハーゲンダッツ」って差し出せば
返ってきたこの答えも予想通り。





『いい、いらない』





でも、俺、めげないの。





「ストロベリーチーズケーキかショコラトリュフ」


『だからいらないって』


「期間限定だよ？」


『女子か…』


「早く、選んで」


『いいってば』


「溶けちゃう」


『こんな寒い日にアイスなんか…』


「こんな寒い日にあったかい部屋で
冷たいアイス食べるのが幸せなんじゃん」


『あったかい部屋…』


「猫はこたつで丸くなるって言うし」


『なんの話？』


「こっちの話」





まぁ、うちこたつないんだけど。


結局アイスは受け取ってくれそうになくて
自分の体温で少しずつ溶けていくのが分かる。

.→←.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す