全部、君のせい

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「歌以外って言われてもねぇ…」





目の前で頭を抱える真実さんは
私が言った『歌以外の仕事』にお手上げ状態。


あれから数日後、時間を作ってくれて
待ち合わせた駅前のカフェ。

この3年間のことを適当に話して
あれこれ聞きたそうにしてたけど
今日の目的は就活だから。





「作詞は？作曲もありだけど」


『ガッツリ歌じゃん』


「DJは？」


『センスないよ。ていうか、歌だし』


「ミキサーは？」


『それも歌、だよ』


「モデルは？歌わないし」


『この顔で表に出る仕事したくない』


「じゃあ、ダンスは？コレオかインストラクター。
まだ踊れるよね？」


『……ギリ、アウト』


「選り好み」


『…してる場合じゃない』





「私が言えることじゃないけど」って付け加えて。





「多分すぐ紹介できると思うから
2、3日したら連絡するね」


『ありがとう。お願いします』


「でも」


『ん？』





一安心できて、コーヒーを一口飲んだ私に
真実さんは少し恐る恐る聞いてきた。





「本当に、もう歌わないの？」





.







そんなの答えは決まってる。






.






『歌わないよ』


「もったいないよ」


『ははっ、そんなこと言うの真実さんだけ』


「本当のことでしょ？」


『でも、もう歌えないから』


「歌えない、か…」


『うん、喉も本調子じゃないしね』


「それは、そうだよね。
知ってるからこそ無理にとは言えないな」





喉なんかとっくに治ってる。


歌から離れたい、ただの言い訳。


もう歌えない。



これをもし、かっこいい言い方するなら

『歌い方、忘れた』とかだと思う。





本当は怖いだけなのに。

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