全部、君のせい

お邪魔しました ページ20

『今日1日、何しよう』




溜息をつきながら
テーブルに置かれた画面が割れた携帯を眺めて

「俺が困るの」

夏輝の言葉を思い出す。



それは多分、連絡を取れない不便さじゃなくて
心配してくれてるから出た言葉って
なんとなく分かる。





『……変えに行くか』





午後になってようやく重い腰を上げた。





許可を得てるとはいえ、
人のクローゼットを開けるなんて
少し後ろめたさを感じながら、開けてびっくり。


綺麗に整理されてるけど
『どんだけ服持ってんの』思わずひとりごと。



明らか背の高い夏輝、
合うサイズの服なんてあるわけないって思ったし
案の定着れそうなのはパーカーくらい。


仕方なく下は昨日自分が履いてたジーンズを履いて
『パーカー借ります』って
誰もいない部屋に声をかけた。





袖を通した瞬間、ふわっと香った柔軟剤は


『せっけん…』

『…夏輝の匂いだ』


しっかり存在を主張して、それでいて謎の安心感。


安心…？


なんか、やだな…


多分夏輝がどうこうじゃなくて
安心してる自分がやなんだ。








荷物なんかたいしてないから財布と…壊れた携帯…


荷物って言えば、私スーツケースあるじゃん。

服も何着か持ってたし
昨日も部屋着借りないで自分の着ればよかった。


色々ありすぎてそこまで頭回らなかったな…


けど、今さら着替えるのは面倒で。





一応、番号が書かれた紙をポケットに突っ込んで
もらったスペアで鍵をかけた。



『ひとまず、お邪魔しました…』



自分の家じゃないのに
『行ってきます』は違う気がして。

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