Tie and Tie -Leiya Seguchi- 2

その存在は ページ18

雨の中、残った男たちは何をしてくるわけでもなく
もう一台の車で走り去った。



その行動を不思議に思いつつも
重い足取りで戻って来たいつもの場所。


賭場の入り口にいたのは、









.








.








「翔太…」






しばらくここにいたのか、待ってくれていたのか
携帯から視線を上げ、びしょ濡れの俺を見て






「黎弥…」


「……」


「風邪ひくだろ…」







気付けば抱き締められてた。



自分が濡れるのも気にせず
受け止めてくれるあったかいその場所


目の前の太陽みたいな笑顔




安堵からか、堰を切ったように









「Aに…会えたんだ……」



「…本当か！？」



「けど……もう俺らの知ってるAじゃなかった…」



「え…？」



「なんか別人みたいで…
俺のことなんか見えてないみたいに…っ」



「……っ」









俺を映さない無機質な瞳を思い出して
言いようのない不安に襲われる。



感情が昂りそうな声色を読み取ってか
諭すように名前を呼ばれたけど









「あいつ…お嬢様とか呼ばれててよ…」



「は…？お嬢様…？」








その笑顔は不安そうな表情に変わっていく。



戸惑ってるのは翔太も同じなんだ。








「お嬢様って…なんだよそれ……」



「訳分かんねぇよな…」



「どういうことだよ…」



「翔太、なんか知らねぇか…？」



「いや……知ってたらとっくに話してるし…」



「だよな…」



「……」



「マジでなんにも知らねぇの…？だって…」








的外れだって分かってるのに…

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