Tie and Tie -Leiya Seguchi- 2

"おかえりなさい" ページ13

そこは…


車で入り口の門を通った後も
なかなか玄関に辿り着かないような広い敷地に佇む、
まるで旅館のような建物だった。



扉が開けられ、
私を出迎えたのは使用人らしき人たち。







「おかえりなさいませお嬢様」







"ここ"で過ごしてきたわけじゃないのに

初めてこの家に足を踏み入れたのに

"おかえりなさい"と言われる違和感。







『……』



「お荷物お預かりします」







近くに来た使用人の人がそう言ったけど





『え……あ、大丈夫です』


「しかし…」


『…自分で持てます』


「A様」








荷物くらい自分で持てる。


そんなことすら
ここではやってもらうのが当たり前なんだろうか。



諭すような木村の声色にも
譲る気にはなれなくて

少しすると、諦めてくれたらしく一歩下がる。





とはいえ、居心地の悪さは変わらない。






木村の方を見ると察してくれたのか


「お部屋に案内します」


数人に何か指示を出した後、
この場を離れさせてくれた。






主人になったから従ってくれてるだけで
味方じゃないのは分かってる。


でも今の私にとっては唯一頼れる存在だから。


それに、どうしてかそこまで悪い人とは思えなかった。

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