side IWAMOTO ページ3
松雪が出て行った後の会議室はシーンとしていた。
ただ1人、滝沢くんは笑っていたけど。
滝沢『あいついつもあんな感じだからさ。気にしないで?でも、Aの言ってたこと、あながち間違いではないから。厳しいことを言うが、現時点ではAの方が知名度も実力も上だから。』
佐久間『えっ?確かに知名度は高いかもしれないですけど、歌とかダンスとかできるんですか?』
阿部『確かに。女優のイメージしかないです。』
松雪A。
男性アイドルしかいないこの事務所において、
紅一点の存在である。
公式で行われた女性アイドルオーディションにおいて
唯一合格した女。
世間には、新たな風を入れるために
女性オーディションしますなんて言っていたけど、
実際はそうではない。
そもそも社長は女性アイドルは入所させるつもりはなく、
ただ、男女平等がうたわれている世の中の流れに
少しでも沿う形で形式上おこなっただけだった。
だから誰も受かるとは一切思っていなかった。
そんな中で1人だけ受かったのが松雪ってわけ。
入所が決まった時には事務所中、
はたまた世間にも衝撃が走って。
かなりのバッシングがあったとも言う。
たしかそれが3年前で。
そこから彼女はドラマを主体に活動してきた。
主役もしていて、演技の実力も知名度も
今や事務所内でもトップクラスだ。
そんな彼女だけど、オーディション風景を見ていないし、
ダンスや歌の実力は一切不明だった。
Jr.だけど、レッスンに顔を出しているのも、
先輩のバッグについているのも見たことない。
アクロバットの得意な俺たちに
そもそもついて来れるのか。
ダンスや歌は出来るのか疑問だった。
滝『まあ、基本演技の仕事ばかりだからなぁ。だけど、彼女は間違いなくアイドルだよ。今度レッスンに合流するはずだから。そこで見てみたらいい。』
それだけ言って滝沢くんは会議室を出た。
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作者名:しょこら | 作成日時:2024年1月7日 5時