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そこからさらにしばらくタクシーを走らせる。
料金とか大丈夫かなと思ったけど、
うちの事務所がよく使うところみたいだし、
かなり支払いをしてるみたいだから融通はききそうだ。
お互いに手は繋いだまま、
無言の中タクシーが走っていく。
しばらくして着いたのは、意外なところだった。
「えっ？海？」
『うん。天橋立って聞いたことない？そこだよ。』
なんか聞いたことあるかもしれない。
阿部ちゃんが三大なんとかって言ってたような。
普段は結構観光客も来るようなところみたいだけど、
今は夜中だから誰もいない。
しばらく歩くと砂浜が見えて、海も見える。
冬だから寒いな。ダウン着てきて良かった。
Aはウールのコートだから寒そうだ。
「コート替えよっか？」
『大丈夫。ありがとう。』
「そっか。」
こんな時、風磨なら黙って替えるんだろうな。
無意識に比べてしまう自分が嫌になる。
浜辺のそばにあった流木に2人で腰掛ける。
『ここね。眠ってるみたいなの。』
「え？」
『父が。』
あれ。お父さんって離婚して
所在が分からないんじゃなかったけ？
「あれ？でもお父さんって。」
『うん。離婚したと思っていたんだけど、
そもそも違ったみたい。』
そう言うと、Aは手紙に書いてあったことを
話し始めてくれた。
お父さんとお母さんが結婚しようと思っていた頃、
お父さんはガンが見つかったらしくて。
スウェーデンのお父さんのご家族は、
先の長くないお父さんと結婚するのは
可哀想だということで反対していたみたいだった。
だけど、そんな2人は結局日本に行くことを決意して。
というのもお姉さんの妊娠が分かったから、
日本で育てようと思ったみたいだった。
それからお姉さんを出産。
その後Aも産まれて。
結婚に反対されていたこともあり、
入籍はできていなかったけど、
幸せに生活をしていたっぽかった。
日本に来てから症状の落ち着いていたお父さんが、
Aが一歳になる手前で癌が再発して、
すぐに亡くなってしまったらしい。
だけど、お母さんはお父さんの死を認めたくなくて、
このことはずっと濁していたみたいだった。
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作者名：しょこら | 作成日時：2024年2月17日 14時
