紅一点×SnowMan⑥ (ページ45)

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side WATANABE ページ45

Aが手紙を開いて読み始める。
そんな彼女の顔は今まで見たことない顔をしていて。

というか、この病院に着いてからの彼女は
ずっと見たことのない彼女だった。

まさかお母さんがそんな状態になってるとは思わなくて。
だから急遽京都に残ったんだ。

なんか嫌なことがあったのかなくらいにしか
思ってなかったから。

タクシーに乗って、着いたら森の中に
真っ暗な病院があったから、最初は
俺死んだかと思ったけどね。

病室に入ると、あと数日しか生きられないとは
思えないくらい、綺麗な人が横たわっていて。

目を閉じていてもこれだけ綺麗な人だから、
きっと元気な時はもっと綺麗な人だったのだろう。

なんとなく雰囲気とかがAに似ていて。
きっと彼女はかなりお母さん似なんだろうなと思った。

無言で手紙を読んでいた彼女の顔を見ると、
静かに涙を流している。

その顔は今までのどんな時よりも悲しそうで、
でも綺麗で。全て読み終わったら、
その手紙を握りしめて大声で泣き始めた。

俺は少し動揺しながらも、
何も思いつかなくて、黙って彼女を抱きしめる。

そのまましばらくAは泣きじゃくっていた。

「、、、大丈夫？」

『うん。大丈夫。タクシー待たせちゃってるね。なべくん。』

「ん？」

少し落ち着いた様子の彼女が顔を上げる。
その顔はとても綺麗で。

風磨の彼女だと分かっているけど、
口付けをしたくなるような顔だった。

『もう1箇所、行ってもいいかな？』

そう言った彼女の顔があまりにも儚すぎて。
ここで断ったらいなくなりそうで怖かった。

「うん。大丈夫。」

『ごめんね、公演で疲れてるのに。』

「気にすんな。明日は、ってもう今日だけど、休演日だからさ。」

『ありがとう。』

彼女の手を引いてタクシーに戻る。
Aの言った行き先は聞いたことない
名前の地域だった。