紅一点×SnowMan⑥ (ページ44)

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「いえ。直葬で大丈夫です。病院サイドでよろしくお願いします。お骨は後日取りに伺いますので。」

医師『では、そのように進めさせていただきます。書類を持ってきますね。』

そう言うと、医師と一緒についてきていた看護師の方は
部屋を出る。

渡『お前、、、。』

「やばいよね。親不孝な娘でしょ？」

渡『いや。そういうことじゃなくて。』

そう言うとなべくんは黙ってしまった。

目の前に母がいて、息しかしてないこの状況を見ても
何も思わないんだ。

それだけ距離が離れていたんだなと思ってしまう。

しばらくして、いくつかの書類を持ってきてくれて、
サインをしていく。
その間もなべくんは隣にずっと居てくれた。

「では、よろしくお願いします。」

医師『分かりました。改めてご連絡いたします。』

義務的なやり取りを終えて病室を出る。

渡『まだ居なくていいのかよ。』

「うん。大丈夫。もう夜遅いし。」

渡『いや、そうじゃなくてさ、、、。』

なべくんの言いたいことは分かる。だけど、
別に最期の別れを惜しむ気持ちが全く湧かないんだ。

看護師『あっ。松雪さん！』

「小島さん？こんばんは。」

帰ろうとしたら、母を担当していた
看護師の小島さんが現れた。

小島『久しぶりねぇ。』

「はい。小島さんもお変わりなくて。」

小島『いや、もう太ったし老けたわよー。』

そう言って明るく笑う小島さんは、
この病院では珍しくフレンドリーな人だった。

小島『お母様のこと、お辛いわよね。』

「うーん。どうなんでしょう。」

辛いと言えば辛いのかもしれないけど、
ずっと会っていない母だから。特に実感はなかった。

小島『あのね。お母様が元気な時に書いた、あなた宛の手紙を預かってるの。死んだら渡してほしいって言われていて。』

そう言うと、一枚の海の模様の便箋を渡される。

「手紙、ですか？」

小島『ええ。元気な時は、Aちゃんの雑誌なんか見ながら可愛いねなんて話をしていたのよ。これが渡したかったの。じゃあ、これからもお仕事頑張ってね。彼氏さんもわざわざありがとうね。』

渡『あっ、俺彼氏じゃ、、、。』

なべくんが否定する前に
小島さんは忙しいのか去ってしまって。

「ごめん。ここで手紙開いてもいいかな？」

渡『うん。大丈夫。』

そう言うと私は手紙を開けた。