紅一点×SnowMan⑥ (ページ43)

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運転手『着きましたよ。』

「ありがとうございます。なべくん、着いた。」

渡『わり。寝てた。』

「仕方ないよ。公演終わりで疲れてるよね。」

タクシー運転手の方には待機してもらうように伝えて、
車を降りる。

渡『ここって、、、病院？』

「うん。こんな山奥にあるの不気味だよね。」

少しだけ顔が引き攣っているなべくんと
一緒に入口に向かう。

「あの。208号室の松雪の娘ですが。ご連絡をいただいていた。」

職員『確認いたしますね。』

いつもここの人は冷たい感じの人が多い。
まあ、そんな感じなのも仕方ないよね。

職員『松雪さんですね。確認が取れました。これをぶら下げて下さい。』

入館証をもらいなべくんと一緒に歩いていく。

『マジでどこ行ってんの？』

「もうすぐ分かるよ。」

少し歩いた先に208号室の文字。

『なあ、まさかここって。』

「うん。母が入院してる病室。」

母は精神を壊してからいくつかの病院を
転々としていた。で、最終的に
母が生まれた故郷であるこの精神病院に入院していた。

医師『松雪さんですか？』

「はい。来るのが遅くなり、申し訳ございません。」

医師『いえ。お仕事柄、お忙しいとはお伺いしておりましたので。お隣の方もご一緒に聞かれますか？』

「お願いします。」

渡『俺聞いていいの？』

「うん、大丈夫。隣にいてほしい。」

私は、覚悟していたつもりだけど、
やっぱり恐怖心がある。咄嗟に彼の右手を握っていた。

医師『中にお入り下さい。』

部屋の中に入ると、静かに眠る母の姿が見える。
酸素マスクをしている以外は綺麗な状態だ。

医師『簡潔に申し上げますと、お母様は脳死の状態です。今日の朝方に急に体調が悪化しまして。今はなんとか生きさせているという状況です。』

そう。今日の午前中に病院から電話があって、
母が危篤であるとは聞いていた。

だけど、周りに迷惑をかけたくなくて黙っていて。
改めて聞くと心に重く響く。

「そうですか。」

医師『おそらくあと2.3日かと。以前は亡き後は臓器提供を希望されておりましたが、その辺りはご変更はありませんか？』

「ええ。悪い部分以外は全て提供してください。」

医師『分かりました。では、その後はどうされますか？こちらでお骨にすることもできますし、葬儀のご希望などありますか？』

そこまで考えないといけないのか。
いよいよ母の死が近いことを実感する。