side NAGASE ページ46
ランベールさんが帰った後、
俺はAちゃんの自宅に向かっていた。
ランベールさんはああやって言っていたけど、
Aちゃんはどう思ってるんやろ。
パンを真剣に作る彼女はまさに職人で。
大会で優勝したことも、
三ツ星レストランで働いていたのも納得できる。
と同時に、初めて出会った時の柔らかい
Aちゃんも確かにAちゃんで。
どちらも本当の姿やとは思うんだけど。
確かに俺と付き合っていたら、
大変な思いをすることは多いやろう。
けど、それ以上に幸せにする自信はあった。
、、、。ランベールさんと話すまでは。
Aちゃんのパンは世界に知られるべきなんは
間違いないと思う。
あー、でも同時にずっとあのままでも
いて欲しいと思うんよな。
俺といるとあまり表に立つことはできないと思う。
SNSの発達でファンの皆さんの推察力はすごいから。
俺といることで彼女がもし、夢を諦めることが
あるんやったら、、、。
それはきっと俺達は別の道を歩むべきや。
俺が足枷になるんか、、、。
あー、もう。あかん。
とりあえずAちゃんのところに行こう。
それからや。
モヤモヤした気持ちを抱えながら
Aちゃんの家に着く。
そしたら玄関が開いて、Aちゃんと紫耀が出てきた。
え、、、？？
紫耀？なんで？知り合いなん？
親しげな様子に不安になる。
手伝っただけと紫耀は言ってるけど、
こんな遅くに家から出てくるとかありえないやん。
さよならする紫耀がすれ違い様に俺に耳打ちした。
『僕たち、ライバルだね。』
と。
その言葉に俺の自信は全てなくなった。
あの時、事務所に残ると決めた俺と、
事務所を辞めたいと言った紫耀は
1番意見がぶつかり合っていた。
脱退が決まってからはビジネス上は問題なかったけど、
それ以外ではぎこちない関係になってしまっていた。
退所して活き活きと活動している紫耀。
残って、事務所もゴタゴタで、
そんな中仕事詰めで余裕のない俺。
どっちがAちゃんを幸せにできるんやろう。
そう思うととても辛かった。
今これ以上話しても、
俺の醜いところしか見せられへん。
いつもなら入るAちゃんの自宅を後にして
俺は自分の家に帰った。
しばらく会わんとこ、、、。
仕事も忙しくなるタイミングやし、
ちょうど良いやろ。
俺は仕事を言い訳に
Aちゃんとのことから少し目を背けた。
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作者名：しょこら | 作成日時：2023年12月6日 12時
