【完結】パン屋×King & Prince【前編】 (ページ42)

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side YOU ページ42

大丈夫かな。
普通に振る舞うことできていたかな？

廉くんを送り出してから、ふぅーっと長く息を吐いた。

なんでこのタイミングなんだろう。
マシューが突然目の前に現れたことに
私はかなり動揺していた。

マシューはとても野心家だ。

仕事においてとてもストイックで、
ビジネスを成功させるには彼以上の適任者はいないと思う。

元々はパリにある小さなベーカリーで
働いていた私。

たまたま声をかけてもらい参加したパンのコンテスト。
初年度に全然勝てなかったのが悔しくて、
そこから研鑽を重ねていった。

4度目の挑戦で世界大会を
制することができたんだ。

パンのコンテストで優勝するという目標を達成してから、
次は何を目指していこうと考えていた時に
マシューから引き抜きがあった。

『三ツ星レストランを世界一のレストランにする。そのためには君の力を借りたいんだ。』

彼は私の目をまっすぐに見て、そう言った。

その真剣な様子に心打たれた私は、
彼と一緒にその目標を達成すべく、
ただがむしゃらに毎日パンのことだけを考え続けていた。

ビジネスパートナーとして一緒にいる時間が長かった分、
彼自身に惹かれていって、
自然な流れでお付き合いをするようになった。

少しずつ有名な雑誌でも特集を組んでもらえるようになり、
世界一になる夢を叶える道筋が見えてきた。

それと比例するように、
マシューと過ごしている時間の中で、
ほとんどがビジネスに関する話ばかりになってしまっていた。

ビジネスの話をしている時の彼
はとても活き活きしていて。

でも24時間常にパンやビジネスについて
頭をフル回転させておかないといけない生活が
辛くなっていたのは事実だ。

ミナトだけはその様子を見て、
とても心配してくれた。

いつも一緒にいるマシューですら
気づかなかったのに。

祖母の死をきっかけに、
疲弊していた私はその環境から逃げたんだ。

でも、逃げたことが悪いことだとは
決して思わない。

日本でパン屋をオープンさせてから、
かつて純粋にパンを作って、
喜んでもらうのが生きがいだった自分を
思い出した。

小さなベーカリーで働き始めた頃の自分を。