【完結】パン屋×King & Prince【前編】 (ページ38)

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side YOU ページ38

「いきなりどうしたの？」

廉くんと西畑さん、正門さんとの食事を終えて自宅に着くと、車庫の前に人が立っていた。

車を入れるために避けてもらおうと声をかけると、
かつての恋人兼ビジネスパートナーであったマシューが立っていた。

どうしても話がしたいというマシューを追い返すことができず、廉くんには先に自宅に入ってもらった。

遅い時間でカフェなどもやっていないため、車を車庫に戻してからお店の椅子に案内した。

『いや、Aにはずっと会おうと思っていたんだけど、仕事が忙しくてね。』

そうやって肩をすくめるマシュー。
仕事人間なところは変わってないみたい。

『結構探すのに苦労したよ。まさか、ここでパン屋をしているとは思わなかったけど。』

「SNSとかは一切やってないからね。」

『Aならもっとちゃんとしたところでお店開いても成功するでしょ。こんなこじんまりしたたところじゃなくて。』

「別にどこでやろうか関係ないでしょ。」

『大体、日本でひっそりとパン屋をする性格でもないだろ。パリに戻っておいでよ。Aがいなくなってから、お店の評判ガタ落ちなんだよ。』

「私はフランスに戻るつもりはない。」

『それはあの男がいるから？』

「彼は関係ないわ。」

『いつの間に彼氏も作って。なんかあいつ見たことあるんだよな。』

「気のせいよ。とにかく私は日本を離れるつもりもないし、表立ってパンを作るつもりはない。今の生活は充実してるし、満足してるのよ。」

『ふーん。でも俺は諦めないよ。君は最高のビジネスパートナーであり恋人だったんだから。』

また来るねと言い、お店を出て行った。

確かにパリでの生活は刺激的で、マシューとも良きビジネスパートナー、恋人として生活はできていた。

でも、今はそれ以上に廉くんと過ごすこの毎日がとても好きで、変えるつもりはない。

ふぅーっと息を吐いてお店の鍵を閉めると、自宅のリビングに戻った。

リビングでは廉くんが携帯をいじっていたが、私が入ってくる音を聞いて顔を上げてくれた。

『おいで。なんか疲れた顔してんで。』

それだけ言って、膝に座るように促してきた。
マシューとはちょっとしか話してないのに疲れ切ってしまったみたい。

そのまま膝に向かい合って座ると肩に顔を埋めた。

廉くんは何も聞かず、トントンと背中を優しく叩いてくれる。
それからしばらくそのままの状態で2人きりの時間を過ごした。