月の裏に隠したい。 (ページ3)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:13,008 hit

#2 ページ3

…

懐かしい互いの手紙を一人で見つめて微笑む。

あの頃は幸せだった。だなんて呟いては、

その手紙をダンボールの奥底にしまう。

この家とももうすぐおさらばだ。

色んな気持ちが住んでいるこの家にいることが辛い。

どの気持ちにもトミーがいて、

どのトミーも、幸せそうで、

『ごめんねトミー、さようなら。』

ーーーー

トミーside

つい一週間前。

Aと付き合い始めてから1年が経つようなそんな記念日の近く。

いつもの様にカンタとの撮影を終えて、Aに会いに来た。

でもそこにはAはいなくて、代わりに綺麗にされた家具のない部屋があるだけ。

ダンボールに詰められた荷物は

今までの幸せや、嬉しさ、楽しさをどこかに捨ててきたかのように

寂しく、悲しみが詰まった箱になっていた。

ト「……A？」

部屋に人の気配がしなくても、声を出して呼んでみる。

反応はない。外出中だろうか？

それでも、引っ越すならそれなりに言って欲しい。

なんでだろう、

どうして、Aは何も言わなかったんだろう…

┈┈┈┈

『…トミー、来てたんだ』

俺がAの家に着いてから3時間ほどたった頃に玄関の扉が開いて

Aが帰ってきた。

少し複雑な声色。

ト「うん、､､､」

『あー、結構待った？』

ト「ん？いや、」

そう？なんて言ってそっぽ向くAのよそよそしさ、

俺の為にと毎日買ってくれていたはずのプリンも、リビングにあった俺たちの思い出を飾る写真達も無くなっている…

ト「……A」

『…ん？』

ト「……引っ越すの？」

恐る恐る聞いてみる。

困ったように俯いて笑ったAは

『自分の気持ちに区切りをつけたくて、』

ねぇトミー、

と続く言葉が怖い。

悲しそうに笑う彼女を抱きしめたい。

声が出ない、体が動かない。

何も、

できない。

『別れよう？』

…