盲目の中で恋をする。【いのちね】 (ページ9)

今日:6 hit、昨日:3 hit、合計:30,388 hit

9 ページ9

inside

あの後は知念の携帯を勝手にだけど拝借して知念のお母さんに電話をかけた。
駅まで迎えに来た知念のお母さんはとても心配したような声で寝ている知念に｢大丈夫っ？｣といって駆け寄った。
気絶しているということを伝え車にそっと高木が乗せたのか今まで腕の中にあった温もりがふわっと消える。

｢ありがとうね。助けてくれて。｣

｢いえ、助けたのは俺じゃなくて伊野尾くんなので。｣

そう言って1歩下がった髙木。

｢本当にありがとう。｣
｢とんでもないです…間に合って本当に良かったです。｣

そう言うとお母さんは｢車。良かったら送ってくから乗って？侑李も安心するだろうから｣と俺ら2人を家まで送っていってくれると言った。

最初に高木が降ろされ俺の家に向かってもらっている途中に、隣の知念が起きたのか衣類とシートの布がざらざらとこすれる音がした。

｢起きた？知念。｣

｢ん？…いの、ちゃん？｣

一瞬寝ぼけたような声をしてからハッとして体を起こした。

｢おはよ、侑李。今、伊野尾くんのおうちに向かっているところよ。｣

｢そ、そうなの。｣

知念は少し緊張しているのか黙ってしまい、その間に俺の家に着いた。

｢わざわざ送ってもらってすみませんでした。｣

｢いいえ、いいの。今日は本当にありがとう。｣

｢今日はゆっくりしてくださいね。知念もお母さんも。｣

そう言って頭を下げた。

｢お母さん。今日伊野ちゃんの家に泊まりいく。｣

後部座席にいる知念がいきなり言葉を発した。