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「ごめん、もうこういう関係はやめよう」
次の日、社内でこころちゃんがいる時はAとの接触を避ける日がまた始まる。朝からAを見られないのは割と仕事にも影響している。
もう本当重症患者だって思う。
自分のデスクに着くとこころちゃんがぴったりと椅子ごと身体を寄せてきて今日の退勤予定を聞いてくる。
その質問には答えず、こころちゃんとの関係に終止符を打つ為に腹を括ってそれだけ返してこころちゃんの椅子を押し返した。
「え?どういうこと?」
「…気になってる…、子がいるんだ。もう自分の生活にケジメつけたい」
俺の言葉を聞くやこころちゃんはまた、あの時みたいに大きな目を見開いて涙を浮ばせ始める。
「なんで、なんで…?だれ?誰なの?広臣を誑かしてる女の子、だれ?」
「…ごめん言えない、…ずっと言おうと思ってたけど彼女面するの辞めてくれないかな。俺とこころちゃん付き合ってないから」
我ながら最低だと思う。絞れるだけこころちゃんから色々なものを絞った癖にAにきちんと向き合いたくてあっさり切り捨てる、でもそれは致し方なくだ。
ヒステリックに泣かれて、自分の立場が危ぶまれる展開になってしまえばAに近づく事も儘ならないかもしれないという自分の弱みだった。
「ッ…!クソ男!!」
こころちゃんの甲高い怒りの声が耳に届いた時には頬がじんじんと熱かった。…朝から叩くかよ。
俺の顔をキッと睨んでいつもの自分のデスクには座らず遠く離れた席に場所を移動するこころちゃんの背中を見送り、俺も自分のパソコンに向き合う。
「…すげーな小野田さん、登坂大丈夫?」
「大丈夫っす、すいません朝から」
とりあえず、これでこころちゃんの障害は無くなったかな。ビンタひとつで済んだだけマシか
「…次いつ誘おうかなー…」
ぶっ叩かれた頬は相変わらずいてえけど、Aとの飲み会の計画を考えてたら全部どうでも良くなった。
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むぅ(プロフ) - はじめまして。続編楽しみにお待ちしております。 (2022年4月22日 13時) (レス) @page45 id: cb68aa1da2 (このIDを非表示/違反報告)
kota(プロフ) - 楽しく読ませてもらってます。臣隆大好き。隆二メインの作品も待ってまーす。 (2021年6月28日 14時) (レス) id: 8448788f30 (このIDを非表示/違反報告)
shirey(プロフ) - すんごくおもしろくて一気見しました! (2021年5月28日 16時) (レス) id: eae9c1c1ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:矢野 | 作成日時:2021年5月20日 12時