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「あれぇ、なんで臣いんの」
早く飲みながら色々な話をしたかった。この2ヶ月間の事を、その一心でAの分も余分に資料を取ってホチキスをただ外していく。
その時缶コーヒーをふたつ持って隆二がフロアに戻ってきた。
「Aが困ってたからヒーローが助けに来たに決まってんだろ?」
「やめて下さい恥ずかしい」
俺のジョークに食い気味でバッサリと切り捨ててくるAの言葉遣いには以前までの警戒心たっぷりの猫みたいな棘は一切無かった。
最初はただヤってみたくてAに声を掛けて、その為の口実を作るために飲むことが目的だったけど今は単純にAとの飲みが楽しかった。
「春ちゃん困ってんの?ってやば、なにこの量。俺も手伝う?」
「今市さん今日残業できない日ですよね?…大丈夫ですありがとうございます。お疲れ様です」
「うげえ、何で春ちゃん俺の退勤事情知ってるの?…まあ残って怒られるの俺もやだからコーヒーだけあげる。臣の分はないから」
隆二はわかりやすく、残念そうに肩を落とした。
前なら隆二も上司にこっそり内緒で残らせて、三人で飲みに行ったら楽しいだろうな、って思ってたけどその事は伏せていた。
「お前のその手に持ってるのくれよ」
「俺のだから無理〜じゃあお先、お疲れ様」
俺はあっさり隆二に振られて隆二は椅子に掛けていた制服を取ってフロアを出て行ってしまった。
「嵐みたいな人ですね今市さん」
Aは隆二に貰ったコーヒーを早速ぷしゃりと開けて喉を鳴らして飲む。ビールかよ。
「俺にもちょうだい」
「ちょっ」
喉が渇いてて仕方なかったからAから強引にコーヒー缶を奪って半分まで飲むと、目の前の真っ赤な茹でダコの様なAを見て笑ってしまう。
「耐性無さすぎ、意識しすぎだろ」
「黙れください」
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むぅ(プロフ) - はじめまして。続編楽しみにお待ちしております。 (2022年4月22日 13時) (レス) @page45 id: cb68aa1da2 (このIDを非表示/違反報告)
kota(プロフ) - 楽しく読ませてもらってます。臣隆大好き。隆二メインの作品も待ってまーす。 (2021年6月28日 14時) (レス) id: 8448788f30 (このIDを非表示/違反報告)
shirey(プロフ) - すんごくおもしろくて一気見しました! (2021年5月28日 16時) (レス) id: eae9c1c1ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:矢野 | 作成日時:2021年5月20日 12時