２５ ページ25
昨日も散々聞いていて
そしてついさっきも聞いたばかりの声色
聴覚のみに集中すれば、それにそっくりな音が耳に入ってくるから
それがきっと、私のモヤモヤした気持ちの答え
それだけが頭の中を占めて
現状とか何もかもを無視して思ったそのままを口にしていた
口にせずにはいられなかった
見つめ合って固まる私達
自分がどんな顔をしているかなんて考える事もしなかったけど
大雅は…目を丸くして、時間がとまったかのように動かない
だけど、
「ッ…！！！」
それは忘れていた現状の元凶
再び外は明るく光り、今度は間髪いれずに大きな音が響いて
「ひっ、な、なん…」
びっくりしすぎて一ミリも動けないでいると
そのまま視界は真っ暗に
さっきとは違う暗闇
電気も、テレビも
家の中の明かりを放っている物が唐突に消えた
その恐怖はとんでもなく心を煽ってくるもので
私はまた震え始めた体で目の前に手を伸ばす
彼はその手を慌てて掴んで、そのまま引き寄せて包んでくれた
「停電…？」
震えて、呼吸をする事も必死な私を力強く抱きしめながら大雅はそう呟く
停電…それはきっとその通り
本来ならばとりあえずブレーカーを見に行くべきなんだろうけど
「こ、こわ…い」
無意識に口をついて出て来たそれは言葉の通り
大雅に抱きしめられて、嬉しくて、ドキドキしすぎて
うっかり現状を忘れさせてしまうくらいのそれだった
けど、どんどん大きくなってく雨音に、鳴り響く雷
終いには停電で真っ暗になる家
取り繕う事もできないくらい、私の頭はどんどん恐怖で満たされていく
あぁだめだ、きっと困らせてしまってる
辛うじて残っている平静な頭の一部分はそう言っている、けど
無理でしょ、こんな、世界が終わるみたいな、地球が怒ってるみたいな
子供みたいな思想しか出てこないけど、つまり私の中ではそんな印象の現状で
「…Aちゃん」
「っ、や…」
大雅は抱きしめてくれていた片方の手を離してゴソゴソと動き始めた
そしてそれが終わると私を呼びながら体を離そうとしてくるから
私は震える体で思わず離れない様にと抵抗してしまう
けど、それは一瞬で
「え…」
優しい手が頬に添えられて
それから両方の耳に、それ
聞こえて来たのは優しい音楽
理解が遅れて、聞こえてくるそれの線を視線で辿っていけばしそれは彼のスマホに繋がっていた
もう私の聞こえる世界はその音楽だけになる
視線を彼の顔に戻せば、ふわりと優しい笑顔
聞こえないのに、口が動いていて
そのまま再び抱きしめられると、視界もなくるから
私はその世界に安心して、目を瞑った
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 94人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ももた(プロフ) - ぴょんさん» ありがとうございます！ちょっとバタバタしてしまって停滞気味ですが、もう結末までストーリーは考え終えていますので、頑張って書いていきますね(＾＾) (2017年6月6日 0時) (
レス) id: f1aa9eefcc (このIDを非表示/違反報告)
ぴょん - 続きがとても楽しみです！頑張ってください！応援してます！ (2017年6月4日 2時) (レス) id: ff860ae17d (このIDを非表示/違反報告)
ももた(プロフ) - べにべにさん» 遅くなりました！こういうコメントのおかげで書き続けられます！本当にありがとうございます(＾＾) (2017年5月23日 22時) (レス) id: f1aa9eefcc (このIDを非表示/違反報告)
べにべに - 待ってます更新！！続きが楽しみです！ (2017年5月21日 13時) (レス) id: 2e57339124 (このIDを非表示/違反報告)
マホlove - ありがとうございます！わざわざ調べていただいて。無事見れました！本当にありがとうございました！！！！ (2017年5月19日 23時) (レス) id: 22d20cf1e3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ももた | 作成日時：2017年4月8日 1時
