【完結】ハナミズキ(実況者ポッキー)

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料理は本当に美味しくて
作った本人が帰ってくる前に食べてしまうのは気が引けたけど、それでも待っている方が気も使わせてしまうだろうと思って先にAちゃんと食べていた
その間の話はなかなか止まらなくて
俺達は友達になろうなんて言いながらお互いの事をほとんど何も知らないから
話し出せば話題には尽きない
当然と言えば当然だった

だけど気付けば主に彼女の姉の話がメインになっていて

職種だったり、2人で親元を離れて状況した話だったり、それでも姉は出張であちこち飛んでいたり
笑顔で語るその様子は姉妹の中の良さが伺える

そして、


「あ、そうだ
昨日言ってた動画、姉が帰ってきてから見てたんだ」

「！」


自然な流れで出て来たそれに、思わず固まる
そんな俺に気付かず彼女はにこにこ笑ったまま


「やっぱお菓子の名前であってた！
ポッキーさんって人の実況動画だったよ」

「っ、そ、う…なんだ」


ははは
って、もう笑うしかない

その名前が彼女の口から出て来た瞬間から、心臓のバクバクが止まらなくて
まさかという気持ちも勿論あった
だけどこんなに、あっさり、視聴者さんだという事が発覚して
俺はどう対応すべきなのか…その答えは見つからないまま
ただひたすら、気付かれない事だけを祈る

けど、


「それでね、大雅と昨日してたゲーム
ポッキーさんも実況してたから一緒に見たいなぁ、って」


興味あったら、なんだけど


「だめ？」


楽しそうに、だけどおそるおそる聞いてくるその様子はきっと万人に可愛いと思われるだろう
だけど今の俺はそれどころじゃなかった

昨日話した内容的に彼女は俺がそれに興味があると思ってそう提案してきたんだろう

間違ってはないけど
興味どころじゃない、だって本人だから

どうしよう、そんな対策は考えていない
ぐるぐると何も浮かばない頭を必死に働かしてみるけど


「興味なかった私も面白かったから、ゲーム好きならきっと気に入ると思う」


にっこり、心から好きなものを勧めてくれているだなんてそんな目に
素直に嬉しくて最早断る理由を失ってしまった
正直浮かれている

それでもポッキーとしての実況を聞いて、大雅としての俺と話して
そのうえで気付いていないなら大丈夫なんだろう
そう分析して俺はその提案を呑んだ

すると、ぱぁ、と音が聞こえてきそうな笑顔を見せて
彼女はリモコンを手にいそいそとその画面をつけ始めた

見慣れたYouTubeの文字
そして履歴から選ばれる、そこは全部ポッキーの動画で埋まっていて少し恥ずかしかった

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