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細められた瞳の中に、間抜けな私が映っていた
冗談半分で言った言葉でこんな事
思考がついていかなくて固まってしまう
そんな私に近づいてくる顔は相変わらず表情がなくて

思考は追い付いていないのに、心臓だけがバクバクと早くなってく


「ま、まほ…っ」


何も考えてはいなかったけど口だけは勝手に開いていて
だけどそれは彼の名前を呟く事すらままならない

もう近づきすぎてその表情すらわからないくらい、呼吸が感じられるくらい近づいて


「っ…!」


私は思わず目を強くつぶった
訳がわからなくなって追い付かない思考は、本能で動く事しかできないから

息すら止めて、固まると


「…え、」


確実に鳴った"ちゅっ"なんて可愛いリップ音
それはない頭で考えていたそこに何の感触もないまま

当たったのは、頬だった

驚いて目を開く
マホトはもう笑っていて


「慰め、とご褒美」


からかうように、にやりと口角があがる彼
腕が解放されると同時に私は力が抜けるのを感じながらゆるゆると椅子に座った
というか落ちて言った
頬を抑えながら


「な、なんの」


慰めはわかる、私から言ったから
聞いたのはご褒美の意味がわからなくて
もしかしたら慰めもご褒美も我慢している事に対してだったのかもしれない
だけどマホトの口調はそれ以外を含んでいる気がして無意識に聞いていた

マホトの触れた場所から熱くなる
心臓は相変わらず早くて
きっと顔は赤くなっているんだろう

どうしよう、不覚にも、恥ずかしい

マホトを真っすぐに見つめられなくて、だけどあからさまに視線を外す事もできないから視線を泳がせてしまって
そんな私にマホトは声を出して笑う
彼も椅子に座りなおして


「ライブ、決まったんだよね」

「!」


おめでとう

なんてにこやかに言われたそれは私の一大イベント
それを動画やSNSで告知はしたけれど、当然小さな小さな規模のもので
私からすれば大きな事だけど
まさかマホトに知ってもらえているとは思っていなくて驚いた

だって私の事を認知してくれたのも、耕大の妹としてあの日出会った時だった訳で

だから、


「あ、ありがとう、ございます」


恥ずかしいのと、嬉しいのとで小さくなってしまう
案外ウブな反応をしてしまっている自分自身に引きながら
それでも顔の熱をすぐに取る事も出来ないまま
ご機嫌になったマホトのその表情にまたきゅんとしながら、私も目の前の水を勢いよく飲み干した

頑張るから、もしよかったら、来てほしいな

定型文のようにそう伝えれば返事をしないまま笑うから
私も熱い顔をそのまま微笑んでみせた

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ももた(プロフ) - まほしゃちょーさん» 嬉しいです!ありがとうございます(^^)もっともっと面白くなるように頑張りますね! (2017年5月8日 2時) (レス) id: 9c4e44a43b (このIDを非表示/違反報告)
まほしゃちょー - めっちゃ面白いです(>_>) (2017年5月7日 23時) (レス) id: 8c91b50b1a (このIDを非表示/違反報告)
あやの - なんかこっちも嬉しいです!テンション上がってよかったです(^-^)vほんとマホト優しい(泣) (2017年5月6日 10時) (レス) id: fa8761fcb7 (このIDを非表示/違反報告)
ももた(プロフ) - りんごいちごさん» コメントありがとうございます!とっても嬉しいです(^^)強気ヒロインなので、そう言っていただけるとほっとします(笑)まだまだ頑張りますね!! (2017年5月5日 0時) (レス) id: f1aa9eefcc (このIDを非表示/違反報告)
りんごいちご(プロフ) - マホトかっこよすぎます(;o;)主人公もめっちゃいい子!これからも頑張ってください応援してます!! (2017年5月4日 15時) (レス) id: ace6ccd855 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ももた | 作成日時:2017年4月8日 1時

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