【完結】約束4(ワタナベマホト)

その後５(マホト編) ページ17

なのに、


「ほんとかなぁ…」


なんて
意地悪な私が顔を出す

マホトは私を安心させるために
そして自分の気持ちを示すために伝えてくれている
結衣さんとのキスは事実だし、それを聞いてしまった私の内心を察してくれて
恥ずかしい気持ちを抑えてまで

なのに、意地悪になってしまったのは
しまったのは？



「中学の時も、高校の時も…彼女、いたよね？」

「……」


その、事実

だって私はそれらを目の当たりにしているし
マホトだってそれを隠していない

それもまた私がマホトを諦めようと思った要因の一つだし

それはそれは…傷ついた
そう、傷ついたんだよ

勝手だけど、別にマホトは悪くないんだけど


でも、開き直ってしまう


だってだって約束を覚えてくれていたなら…ね？



「私はマホト以外…だ、誰も知らないよ」


「え、」


私は、そうだった
マホトとの約束にしがみついて
惨めに、哀れに何にもなかった

…いやそんなの逆ギレだし、自分勝手な意見なんだけど

黙っていたものが私を止めていた全てがどんどんと剝がれていくような感覚


俯いていた視線を少しあげてマホトを見るとその顔は驚いていた
…それはこの歳までそういった経験が何もないといった事に対しての驚きで
要は引いているんだ、と


「…引きすぎでしょ」

「な、ばっ…引いてねーよ」


思ったんだけど
マホトの返答を見て、その考えは間違っていたみたいで

握られた手をそのままマホトは座っていた腰をあげて顔を近づけながら



「単純に、嬉しい」

「ッ…」


そう、笑顔で囁いて

その笑顔は本当に嬉しそうな
だけど悪戯的な、そんな表情

私は顔に熱が溜まっていくのを感じていた


「わ、私は、辛かったのに」


恥ずかしくて、何か言わなきゃなんて謎に焦って
照れ隠しに否定的に攻めてみたりする

だけどそんなもの今更意味なくて
マホトはその言葉に声を出しながら楽しそうに笑って
軽く軽く謝ったりして



「だけど俺、言ってたじゃん」


「な、何が」


「最後に笑うのはお前って決まってんだ、って」


なーんてな、

なんて本当に機嫌よく笑って言ってくる
それは子供のような本当に無垢な笑顔で

悔しいけどドキッとさせられた
なのに心が温かくなるようなそんな笑顔



「それ歌詞でしょ…」


「お、よく知ってんね」

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