１３８話 ページ2
叫んでも叫んでも、Aは意識を失ったまま応える事はなくて
流れる赤い血は止まらない
Aの体から出ていくそれは、まるでその命を少しずつ零していっているようで
鼓動が早くなる
名前を呼ぶ事しかできなくて
救急車が到着して病院に行くまでの時間が永遠の様に長く感じた
そしてAは手術室へと
俺とはじめは近くの椅子に腰かけて
手が震えている事に気付いた
その手にも服にも、Aの赤い血がついていて
…だけどそんな事もうどうでもよかった
俯いて拳をギュッと握る
そんな俺の背中を、はじめはぽんっと叩いた
「大丈夫…大丈夫だよ」
「…、」
何の根拠もない慰め
俺はその顔を見る事も返事を返す事もしない
だけど
泣いてしまいそうなくらいには、心強かった
そして数時間後のいま
眠っているA
そのまま個室に通されて
嗚呼、命に別状はなかったんだな、なんて
「…え、」
そんな事はなくて
医者から告げられたのは、Aがこのまま目を覚まさない可能性
それは生命が維持出来ていても眠ったままの状態という事で
…事実上の、死
そのタイムリミットは、２４時間
１日目を覚まさなければAはもう二度と起きる事はない、らしい
茫然と立ちすくんで
ベッドに横たわるAを見つめていた
ただただ眠っているだけにしか見えないのに
二度と、目を覚まさないかもしれない？
「…そんなこと」
ある訳ねぇだろ
力なく呟いて、俺は準備された椅子に座ってAの手を握った
その手は冷たすぎて
命の温かさを感じなくて
なんで、どうしてこんな事になってしまった
意識を失う前のAの笑顔を思い出す
本当に幸せそうな顔だった
本当に、幸せそうに、俺の事を好きなんて
そして、謝っていた
…どうして
「…言い逃げなんて、させねぇよ」
握り返す事のないその手を力強く握りながら、呟く
俺がお前を好きで
お前も俺の事が好きで
だったらこれは"はじまり"なんじゃねーの？
…いろんな問題はあるかもしれない
それは乗り越えていかなくてはならないもので
だからといって、こんな"問題"はだめだろ
「かえってこい」
真っ直ぐに、はっきりとAに言う
俺の事が好きなんだったら、帰ってこい
…だって俺達は、あの約束を果たさなければいけないから
だから
この声を頼りに、
Aは目を覚ます様子のないまま
夜はどんどんと更けていく
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於音 - 本当にいい小説でドキドキ凄かったです！！感情が顔に出てしまいました笑笑これからも頑張ってください！ (2020年4月27日 23時) (
レス) id: 34eb78efc2 (このIDを非表示/違反報告)
あみ - とてもいい小説で、泣いたのは、これが初めてでした！いい作品ですね！♪( ´ ; _ ; ` )これからも頑張って下さい (2018年10月1日 19時) (レス) id: d07448dafe (このIDを非表示/違反報告)
ももた(プロフ) - sakura829twinsさん» ありがとうございます！書くのもとても楽しかったですが、そういうコメントを頂けると本当に励みになります(^^)次はおそらく「恋人ごっこ」という作品がもうすぐ最終回ですので、もしよろしければそちらもお願い致します(笑) (2017年7月12日 17時) (レス) id: 9c4e44a43b (このIDを非表示/違反報告)
sakura829twins(プロフ) - 占ツクの小説を読んで泣いたの初めてです(泣)ほんとにいい話でした！読めてよかったです！！ (2017年7月10日 19時) (レス) id: d081082d44 (このIDを非表示/違反報告)
ももた(プロフ) - みにーさん» 作者の作品一覧からご覧下さい(^^)それでも表示されない場合はネットから夢ツクールへ行って頂き、設定ページにてR18の表示設定をして頂ければ出てくるかと思われます。 (2017年4月24日 23時) (レス) id: 9c4e44a43b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ももた | 作成日時：2017年4月2日 3時
