65話 ページ15
お互い真実を知るまでは、一度体を重ねただけで
それ以降は私が酔って求めても何もしなかったのに
化けの皮が剥がれたかのようだった
実際、彼は私を抱いたし婚約している事実も隠していた
だけど謝罪してお詫びとして私と出かけて
その後何もしなかったんだから
…私がひとりで勘違いして舞い上がっていただけなんだから
それを貫けば、信じられたのに
彼は私の妊娠を否定して
私の気持ちを否定して
そしてまた…抱いた
待てない、とでも言うように非常階段を降りた地下への踊り場で
一言も言葉を交わす事なく
二度目のそれは、意識も何もかもがハッキリしていて
触れる指先の冷たさとか、吐息の熱さとか
匂いも、視線も
全部全部、生々しくて恥ずかしくてたまらなかった
そして何よりも悲しくて
事を終えたらそのまま、私を置いて去っていった
アルコールが入っている状態が、彼の本性なのだろうか
勢いのままという印象
私との遊びを受け入れた
あんなにも無表情のまま、色のない瞳で
つまり私なんてはじめから眼中になかったし
本当はそういう事を出来ちゃう人なんだって
「…っ、」
息が詰まりそうになる
レトさんの事ばかりそんな風に責めているけど
私だって同じ穴の狢だ
レトさんからすれば私だって彼氏がいて、そういう事をしているんだから
…泣いているのを見て、私の気持ちを察した可能性もあるけど
どのみち婚約者がいてそういう事をしている時点で、同じこと
きっと私に気持ちが向く事も、同情の余地も、ない
「…はぁ」
じわりと滲む視界
それを抑えようと上を向く
これからまた仕事で、いちいち化粧を直している時間ももうないんだから
靴を履いて、玄関を出る
悲しくて、切なくて、悔しくて、辛くて
なのに…触れてもらえるのが嬉しい、なんて
信じられない、救われない
だけど、もう決めた事
腹を括れ
涙なんて、昨日さんざん流した
何も考える必要はない
さっさと諦めて、心を殺して
最低な事を重ねて、この気持ちを失くしてしまおう
深呼吸して、私は隣の家を見ない様に通り過ぎてエレベーターへ
そのままマンションを後にする
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 56人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
稔(プロフ) - ももたさん» お返事ありがとうございます！！もう本当にドキドキしながら読ませて頂いてました！最後まで応援させて頂きます！！更新気長に待ってます！！ (2019年1月11日 22時) (
レス) id: 35aeef1de2 (このIDを非表示/違反報告)
ももた(プロフ) - 稔さん» ふおおありがとうございます！具体的な感想、本当に嬉しいです。展開はもう考えてあるので後は書くスピードだけなので、なるべく早く更新できるように頑張りますね！また見て頂けると嬉しいです(o^―^o) (2019年1月11日 0時) (レス) id: f1aa9eefcc (このIDを非表示/違反報告)
稔(プロフ) - 最初の明るめな雰囲気とは打って変わって読めば読むほど、どんどんシリアスになっていく展開に気がついたらどっぷりハマっていました…もう展開が気になり過ぎて心臓がバクバクです！！更新楽しみにしてます！！頑張ってください！応援してます！！ (2019年1月10日 1時) (レス) id: 35aeef1de2 (このIDを非表示/違反報告)
うーろんちゃ(プロフ) - ももたさん» がんばってください！応援してます！！！ (2018年9月13日 22時) (レス) id: d9604aa4ed (このIDを非表示/違反報告)
ももた(プロフ) - うーろんちゃさん» 何だかダレて？きてるような気がしていたんですが..気になって頂けて嬉しいです！また今日から執筆頑張ります！！ (2018年9月13日 18時) (レス) id: 9c4e44a43b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ももた | 作成日時：2018年7月25日 1時
