＊3＊ ページ3
.
コンコンと控えめなノック音が聞こえて閉じていた瞼を上げる
「はい、どうぞ」
間宮「お花持ってきましたよ」
返事を聞いて病室に入ってきた間宮さんを見て
ベッドに寝転がっていた身体を起こす
間宮「先程お見えになった方からです
せめてお花だけでも、と」
間宮さんはにこっと微笑みながら
その手の中にある綺麗に包まれた花をこちらに差し出す
それを見て自分の眉間がぴくっと動いたのが分かった
「......」
間宮「そこに飾っておきますね」
私の変化に気づいたであろう間宮さんはそこには触れずに
ベッド横にある花瓶の中の花を新しいものと入れ替え始めた
私は目覚めてから誰であろうと面会を全部断っている
それは、目覚めてすぐに見た母の顔が忘れられないからだ
全ての記憶を失くした娘を前にしたときのあの母の絶望した表情
その場で倒れそうになった母を父と思われる人が支えて
病室を出ていく二人の背中
ドアが閉まるまでずっと見ていた
そして、同時に思った
今ここにいる私は私を知っている人達を傷つけてしまうんだ
私が傷つけてるんだ
私が......
それなら、誰にも会わなければいいんだ
そうすれば誰かが傷つくようなこともないし
私も誰かの傷ついた表情を見なくて済む
そうだ、独りでいればいいんだ
間宮「これでよしっと」
「......」
間宮「とても綺麗ですね」
初めのほうは面会を断る回数は多くて
胸が締めつけられるような痛みを感じていたが
最近は滅多に面会希望の話を聞くことがなく
少しずつ気持ちが軽くなっていくようだった
それなのに、週に２､３回必ず小さな花束を持ってやってくる人がいる
何度来たって結果は変わらないのに懲りずにやってくるのだ
その花を見るたびに少しうんざりするような気分にもなる
だけど......
「......」
柔らかな空気に包まれたかのような
どこか優しい安心感も生まれるんだ
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 8人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒にゃんこ(プロフ) - ゆうさん» ただ、私の場合いくつかの曲を聴いて作品の登場人物が動いてる姿が浮かんだりするので、その曲のイメージだけで書いているわけではないので、所々違うところもあると思います。作品を読むときはそこをご理解ください。でも、興味を持ってもらえてとても嬉しいです！ (2015年8月9日 19時) (
レス) id: e169b48ed4 (このIDを非表示/違反報告)
黒にゃんこ(プロフ) - ゆうさん» はじめまして、コメントありがとうございます！ゆうさんの言う通りその曲のイメージをお借りしています。 (2015年8月9日 19時) (レス) id: e169b48ed4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - わたしThe Overが大好きで、嵐さんでお話書かれてるのを探してまして、こちらの小説を拝見させていただいたんです！。もしそうなら、読みたいなって思いまして、、、。 (2015年7月26日 14時) (レス) id: a9e521faa0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - はじめまして。このお話って、UVERworldのThe Over を元にされてますか？ (2015年7月26日 14時) (レス) id: a9e521faa0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：黒にゃんこ | 作成日時：2015年6月14日 15時
