クッキーの味見を忘れた件 ページ20
教室を前にして、一つ深呼吸をする。
深呼吸、というよりは、ため息に近い。
右手に握られている昨日作ったクッキー。
……出来ることなら。
今すぐ。
自分で食べたい。
どうせリョーマにあげるなら、と手を抜こうと思っていたけど、作ってるうちに楽しくなって、かなり本格的なものになってしまった。
昨日発見した、美味しいハーブの配合。
包み紙の中のクッキーを思い浮かべながら、涙を流す。
まぁこんなことも無駄な足掻きだ。
家に持って帰ったとしても、最終的にはクッキーはリョーマの胃の中に落ち着くだろうし。
仕方なく、力まかせに引き戸を開けた。
ドアの近くでたむろっていた男子生徒のうちの一人が、「うわっ」と声をあげたのが聞こえたけど、そんなことはどうでもいい。
軽く息を吸って、
「越前くんいますか……？」
とできる限りの猫撫で声を出す。
先程声をあげた彼が、戸惑いつつもリョーマを呼んでくれた。
いつものように冷めたリョーマの顔が視界を埋める。
「何今の声気持ち悪い」
「削ぐぞこら」
「どこをだよ」とリョーマは笑う。
「頭皮」
「……」
ってか今の声もお前のためだからね。
「もしかして越前の彼女？」みたいな雰囲気醸し出すためだからね。
「はい。早く」
出された手に、クッキーを置く。
……
「……離してくんない？」
ぐぐぐ、と引き寄せられたけど、クッキーへの未練がましさで、私はクッキーを掴んだ手を離せない。
更に強く引っ張られたので、取り戻そうと逆にこちらへ引っ張った。
「いやなんなの」
「……今回のクッキー絶対おいしい」
「いつも美味いじゃん」
「昨日新しい隠し味思いついたんだよ。百パー成功してるんだよ」
「知らないんだけど」
そう言って、クッキーを私の手からかっさらった。
「泣きたい」
「涙腺もろすぎじゃない？」
リョーマは乱暴に包み紙を開けて、クッキーを口に入れた。
丁重に扱えよ。
「え、何これうっま」
「知ってる」
「とか言ってガッツポーズ」
自分では確かめられなかったけど、昨日の挑戦が成功していたことは素直に嬉しい。
まぁ、いつでもまた作れるし、と半ば開き直っていると、唐突にリョーマが齧りかけのクッキーを私の口にねじ込んだ。
甘いけど爽やかな味が口の中に広がる。
「……うま……」
色々な顔を持ち合わせているのに、くどくならずにまとまってる。
「私……神……？」
「調子乗んないでくんない？」
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レイ(プロフ) - めっちゃおもしろいっすね！お気に入り登録させていただきました笑応援してます！ (11月2日 16時) (
レス) id: dd83a370ce (このIDを非表示/違反報告)
水団子(プロフ) - 杠葉ナオさん» 光栄です〜！！！この小説でリョーマくんの幼なじみになっちゃってください笑笑のんびり更新ですが最後までお付き合い頂けると幸いです。コメントありがとうございました！ (2020年4月30日 21時) (レス) id: 4f5e2162c5 (このIDを非表示/違反報告)
杠葉ナオ - 超面白かったです！！リョーマ格好いい！幼なじみになりたいわ！(無理です) (2019年5月27日 20時) (レス) id: 3bb8824d05 (このIDを非表示/違反報告)
水団子(プロフ) - Kmiya Kaji725さん» ハイキューの方にもコメント下さってましたよね.......！！応援ありがとうございます、ハイキューとテニプリ両立出来てない気がしますが.......なんとか完結させますので、しばらくお付き合い頂けたら光栄です！コメントありがとうございました！！ (2019年5月27日 18時) (レス) id: f26d4bb807 (このIDを非表示/違反報告)
水団子(プロフ) - loveリョーマさん» リョーマくんへの愛が名前から溢れてますね.......！！初めてがこの作品とは光栄です〜〜！！バカだなんてとんでもないです！！コメントありがとうございました！ (2019年5月27日 18時) (レス) id: f26d4bb807 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：水団子 | 作成日時：2015年9月21日 20時
