RUN BTS (ページ9)

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9.JIN 1 ページ9

眩いばかりのスポットライトを浴びて、
洪水のような歓声の中、溺れないように。
今日もJINを演じきった。

「army愛してるー！」

BTSのJINは長男で、賑やかで明るい男。
僕がBTSになった時に決めた。
弟達は僕とJINが守るって。

沢山のarmy達に愛されて、曲もヒットして、
コンサートで世界中を周った。
知名度も地位も信じられないくらい上がった。
眠る時間が少なくても、今どこの国にいるのかわからなくなっても
愛されることが幸せで
当たり前ではないこの瞬間に感謝した。

歌やダンスのレッスンだって必死でやってきたし、
四六時中回るカメラにもやまないフラッシュにも慣れた。

JINを演じる事は、僕の当たり前になった。
むしろほとんどがJINで、ソクジンに戻れる時間の方が
少なくなった。
それはとても…幸せな事なんだ。
だけど、本当は辛い。
どちらが本当の僕なのか、たまに分からなくなって
不安になる。

沢山の人が離れていった。

僕に気を使って、僕は何も変わってないのに。
とても寂しくて、辛かったけどメンバーがいてくれて
乗り越えてこれた。
あと、6人以外にも僕を僕として扱ってくれる人がいるから。

足元が暗くなった時、僕には行きたくなる所がある。
それはもう何年も変わってない。

「Aー？」

小さな二階建てアパート。
二階の角部屋の玄関に鍵をさして、ドアを開く。
こんな鍵一つで開く玄関に本当は不安を覚えるけど、
Aには全く問題のないことらしい。

鍵をかけて、チェーンをして靴を脱ぎながら小さな声で部屋の主を呼ぶ。

なぜなら今現在時刻は夜中の二時だから。

廊下を進む先のドアの向こうはリビング。
もちろん、真っ暗。
寝てる？いや絶対そんな事はない。
キッチンには乱雑に重ねられた皿とボウル。
テーブルには飲みかけのグラスと食べかけの食事。
洋服もあちこちにバラバラと散らばっていて。

「相変わらず、汚い」

薄暗いリビングを眺めて、ニヤッと笑う。

リビングの先にある扉から漏れる明かり。

ゴタゴタ散らばったものを避けながら進み、
そっとドアノブに手をかける。

「A？」

また小声で呼びかけ、部屋を覗く。
思った通りそこにAはいた。