側近は電脳少女 ２

データ25 ページ27

久々に見る、画面越しの世界。



頭上に浮かぶアプリケーション
ツインテールの長い髪。
電子媒体との接続用の赤い耳のような受信機



人工知能、メルロの姿だ。


『今、会いに行きます』


電脳空間での見慣れたルートを通り、彼の元に向かった。




深夜に近い時刻。

目指した場所は、中也さんのパソコン。


案の定、昼間に寝不足で倒れたにもかかわらず中也さんはパソコン画面を開いていた。


中「やっぱりみつからねぇ・・・のか」


スピーカーを通して彼の声が聞こえる。

色々なページを開いているから避けるのも一苦労なんですけど・・・


ようやく沢山のページを避けてメイン画面に出られた。

彼はぐったりと俯いている。



『ダメじゃないですか、主。寝てないと！』


大きな声を上げると、パッと顔を上げる。


中「・・・・・・なっ！？」


自慢の帽子がずり落ちても気にせず、大きく青色の瞳を見開く。


『お騒がせしました。主・・・』


今までと変わらず、私は返す。


中「メルロ手前！今までどこに・・・！」


画面にガバッと近寄る中也さん。

よほど心配させたのか、まだ信じられないという顔をされる。


『はい・・・爆発で少しバグが生じまして。調べ物もありまして・・・怒ってますか？』


中「あぁ・・・もぅ構わねぇよ。手前が戻ってきたんだ。やっと・・・」


・・・戻ってきた、と言われると心苦しい。
帰ってきたわけではなく



念のための別れの挨拶なのだから。


『・・・今少し厄介な調べ物してまして、またすぐに行かなきゃならないのです。なのであと少しだけ、待っていて下さい』


大好きで、大切な人に嘘をつき、笑う。


特務課のパソコンでウイルスに殺されれば、最悪の場合存在が消えてしまう。



これが最期になるかもしれない。



中「どこに行きやがる！おい、メルロ！」


そんな悲しそうな顔しないで・・・

行くなと言うように手を伸ばさないで・・・



泣きそうになる。



『主、私の主は主だけです。必ず戻ってきます。だから・・・倒れちゃダメですよ』


画面に手を伸ばした中也さんの手と重なる様に、私も手を伸ばす。


電脳化した私の小さな手と
人間の中也さんの大きな手

・・・互いの手が重なる。

次元に遮られたその手を離して少しだけ画面の遠くに行く。



『しばらくさよならです、私の大事な主』




ニコリと笑顔を浮かべる。

だって・・・そうしないと。

そうしないと、今にも泣きだしそうだから。

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