8話 月島蛍 鐘有馬久留 ページ9
『一方そのころ。応接室に案内された蛍は扉を開けて中に入ります。扉を開けた瞬間、室内から感じる異様な雰囲気に、一瞬足を止めてしまうかもしれません。』
部屋のテーブル、椅子、全てが曲線でできていているだけで気分が悪くなる。
そしてその椅子に座った一人の男性がいる。彼が鐘有馬久留。
馬久留「ご無沙汰しております。ご足労頂いて申し訳ありませんね。まぁ、座ってください。」
月島「あなたの奥さんに半狂乱になっていると聞いてるんですけど。」
馬久留「妻…？あぁ…。半狂乱なんて大袈裟だよ。僕はやりたいことをやっているだけだ。」
月島「やりたいこと…？」
それから馬久留さんは気が狂ったかのように焦点の定まらない目で早口に言葉を発していた。
内容は理解できなかったけど要約すると「死を超越してコントロールする希望を見つけた。その代償に「妙な犬っころ」に付きまとわれ、家の中に決壊を張ったおかげで何とか凌いでいるけど家から出られない」と。
馬久留「死を超えさせる方法は手に入れました。最初はまぁ、酷いなんて言葉が可愛く思えるような出来でしたがね。ただ。試行錯誤を繰り返していくうちにどんどん成功になっている気がするんです。"作った数"だけ藍美に近づいているんです。」
月島「作った数…？」
馬久留「あなたもご覧になりましたでしょう？あなたをこの家まで連れてきたアレは見た目だけ素晴らしい。でもあれも違う。結局中身がない。初戦は動く人形どまり。藍美ではない。藍美ではない。藍美ではない…！クソックソ！クソックソ！！どいつもこいつも結局は出来損ないだ！ダメだダメだダメだダメだ！偽物ばかり、偽物ばかりだ！」
さっき「半狂乱なんて大袈裟だよ」なんて言っていたけど合ってるじゃん…。
急に大きな声を上げて少しびっくりする。
馬久留「何かが、何かが足りないんだ…。でも何が！！もうこの屋敷に籠ってできることは何もない。完璧な藍美を生き返らせる最後の1ピースを探しに行くんだ！あのクソったれの犬どもにかまっている暇はない！」
馬久留さんが黙ると「はぁ…はぁ」という息を整える音が聞こえる。
そして「ククククッ」と不敵な笑い声が聞こえると馬久留さんは再び口を開いた。
馬久留「運が悪かったですね、月島さん。申し訳ないとは思っているんですよ。僕にはもう、あなたくらいしか屋敷に呼べる知り合いがいなかった。」
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作者名：雪 | 作成日時：2021年1月24日 12時
