第12話 ページ14
豪炎寺「どうして泣いてるんだ？」
A「えっ…」
たくさんの人たちがいる病院。
その中で唯一私に声を掛けてくれたのが豪炎寺さんだった。
豪炎寺「よかったら少し話さないか？」
その一言で、私を救ってくれた。
稲妻病院の中庭、病室前の廊下と違って日の光がよく入るベンチを選択し二人で腰かけた。
A「じゃあ豪炎寺さんって、あのイナズマジャパンの…？」
外に出るまでにいろんな事を話した。
最初は両親を亡くしたショックと多少の人見知りからほぼ無口だったが、少しずつ口数も増えてきて、中庭に出るころには普通に話せるようになっていた。
豪炎寺「あぁ。Aはサッカー好きなのか？」
A「お父さんが好きだったから、ちょっとだけ」
豪炎寺「それならサッカー、やってみないか」
A「ダメだよ……。お父さんとお母さんがこんな状況なのに私だけ楽しい思いしたら…」
そうぽつりとつぶやくと、豪炎寺さんは急に真顔になった。
豪炎寺「それは違うと思うぞ」
A「えっ……？」
豪炎寺「俺の妹、この病院に入院してたんだ。俺のサッカーの試合を見に来る途中で事故に遭ってからずっと。そのときは俺もAと同じ考えだった。でも気付かされたんだ、誰が一番俺のサッカーを喜んでくれるかを」
A「……妹さん」
豪炎寺「あぁ。だから今も俺はサッカーを続けている。Aも同じなんじゃないのか？俺はAの両親に会ったことはないが、きっと病室の前で泣き続けてほしくはないはずだ」
大切なモノに気付かされた、そんな気がした。
こんなウジウジしていたって、誰も喜ぶはずがない。
A「……豪炎寺さん、私にサッカーを教えてください…！！」
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作者名：master_2 | 作成日時：2023年3月19日 11時
