2 ページ2
「じゃあ、怒っとる?」
「怒ってへん。」
言いつつ抱えていたクッションに顔を埋める。
あー、もう。
正直めんどくさい。
めんどくさいけど、それでも神ちゃんを好きな気持ちは変わらないから、俺はよっぽど神ちゃんに溺れとるんやろう。
さて、それをどうやって本人に伝えたもんか。
「ふぅー。」
軽く息を吐いて立ち上がれば神ちゃんの肩かビクッと跳ねた。
怒っとるわけやないでって思いを込めて頭に手を置く。
それでも顔をあげてくれないあたり、自分の態度を後悔しとるんやろな。
「大丈夫やから、ちょっと待ってて。」
頭に添えていた手でそのまま軽く髪の毛を乱すが、反応が返ってこない。
普段なら『なにすんねん!』って怒ってくるのに。
結構落ちてるな。
申し訳ないけれど、今は言葉で何言ってもあかんやろうから一旦離れて台所に向かう。
あの調子やとえらい自己嫌悪に陥って泣くのを耐えてるやろから、はよ戻ってやらな。
しげが行ってもうた。
寂しい。でも、完全に俺が悪い。
だけど、ドラマの登場人物が主人公の嫌いなところを誇らしげに並べる様が、それでも好きだと胸を張って言う姿が、かっこよくて羨ましくて。
そんな時、隣に居てほしい相手は帰りが遅くて。
しげの事を信じてないわけやないけど、「ホンマに俺の事好き?」なんて聞いてみたくなった。
やけどそんなこと聞ける訳もなくて、ずいぶんと回りくどい確かめ方をしてしまった。
自分で言い出した事やのに、いざ聞いてみればしげが自分と一緒にいてくれる理由がわからなくなって。
挙げられていく嫌いなところがしげに見捨てられる原因になるんじゃないかって、離れていく理由に気づかせてしまったんじゃないかって怖くなった。
脳裏に背を向けるしげが浮かんで、鼻の奥がツンとした。
そんな自分の弱さが嫌になる。
しげにも迷惑を掛けてしまった。
きっと呆れとる。
俺はいったい、あと何回後悔すればええんやろう。
あと何回、しげに気を遣わせたらええんやろう。
あと何回でしげに終わりを告げられるんやろう。
怖い。
顔を押し付けたクッションが湿ってきたのを感じたとき、足音が聞こえた。
「熱いから気ぃ付けや?」
チラリと見やれば、俺のお気に入りのマグカップから甘い香りが漂っていた。
87人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズWEST」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さゆ | 作成日時:2018年8月7日 1時