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T「あ、きゅーけつき。また来たんや。」
Y「あー、うん。…なぁ、天狗が来るまで暇やろ？それまでボクと話せん？お前のこと、もっと知りたい。」
T「…俺、話せるようなことなんもないで。
物心着いた頃には鍵付きの建物で綺麗な着物と食事を与えられて、役割を説かれて、それの繰り返し。ホンマにそれだけ。
なぁ、きゅーけつきは昨日ここ来たんやろ？その前はどこにおったん？」
彼に促され、ボクはイギリスでのことを話した。それが終われば、その前の国、またその前の国、ボクは永遠の命をもつ吸血鬼やから、いくらでも話せることがある。
彼はとても聞き上手だった。興味津々に細かいところまで質問をするので、その度記憶が掘り起こされ、話はどんどん進んだ。
彼はキラキラした目でボクの経験の全てを知識として吸収しようとしているかのようだった。
こんなに楽しい時間は初めてだった。気がつけば夜になっていた。少し眠たそうな彼に寝るように促し、ボクは滝を離れた。
また日が登って、ボクは彼の所へ行った。彼はまた、ボクの話を聞きたがった。彼のそばで話をしていると心が凪いだ。
また日が落ちて、彼が寝て、そして翌朝、ボクが滝に来た時、彼は目覚めていなかった。
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作者名：らむ倉 | 作成日時：2020年8月10日 0時
