I wanna dye you (ページ5)

今日:5 hit、昨日:3 hit、合計:9,343 hit

・ページ5

T「じゃあ、天狗は別にいるってことか。きゅーけつきは、この山に住んでるの？天狗に合ったことない？」

Y「ボクは、今日ここに来たからそれは分からへんなぁ。」
「なぁ、お前はなんで、テングに会いたいねん？死ぬだけやったら、今からここの滝に飛び込んでも死ねるやん。ちゃんとテングに会わんと村に災害が起こるかもしれへんからか？」

T「あー、あの人らは正直どうでもええ。俺は、知りたいだけやねん。生まれてからこれまで、生贄として傷をつけないように育てられたから、知らんことが沢山沢山ある。せめて、天狗と話して、村の誰も知り得ない天狗のことを知って、そんで死にたい。」

彼は歪んでいる。ボクはそう思った。彼の話によると、彼は物心着いた頃には親と切り離され、15になれば生贄に捧げると言い聞かされて、腫れ物のように扱われ、育てられてきたらしい。
殺されるために育てられた人生を歩んできた人間が、最後までこうも真っ直ぐとした考えを持てるだろうか。
彼は生きようとしていない。なのに、夢を掲げて生きる人のような健全で真っ直ぐな心を持っている。真っ直ぐすぎるが故に、それは異常で歪んでいる。ボクはそう思った。

Y「テングに会えるまで、ここで待つん？」

T「うん。でもまぁ、水はあるけど食べるもんはないから、なるべく早く会いたいけどなぁ。」

Y「そっか、会えたらええな」

ボクそう言い残してその場を去った。
ここは目的地ではない。もっと色んな場所を見て回りたい。1日で色んな場所に行った。
だけど、どこも留まりたくはならなかった。
日が暮れてまた昇って、ボクはいつの間にかあの滝に戻っていた。