I wanna dye you (ページ22)

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信ちゃんと暮らしていた頃だ。1人で河原に行った時、転がって割れた石の中に、紫に光る結晶の鍾乳石を見つけたことがあった。あまりにも綺麗なそれを、ボクは1番に信ちゃんに見せよう！信ちゃんへのおみやげだ！と咄嗟に思ったのだった。
石を手渡して、

「綺麗やろ？信ちゃんのおみやげやねん！信ちゃんの目の色みたいで素敵やなーって！！」

と伝えたボクに、信ちゃんは一瞬泣き笑いのような顔をした。その時彼は、

「やすも、いつかこんな気持ちがわかるようになるかもなぁ」

と、ボクの頭を優しく撫でながら言ったのだった。

その時ボクは、自分の感情の名前を知らなかったし、信ちゃんがなんでそんなに慈しむような顔をしたのかも知らなかった。だけども今、わかった気がする。あの時ボクは、信ちゃんに守られていた。何もかもを授けて、生きる術を教えてくれる信ちゃんに、ボクはまだ無力でなにも報いることが出来なかった。だから、いつでも感謝を伝えたいと思っていたのだ。だから、綺麗だ、素敵だと思った石を信ちゃんにあげようと咄嗟に思った。

信ちゃんはきっと嬉しかっただろう。今わかる。楽しい時間を過ごして作ったものをボクにあげようと思ってくれたことが、とても嬉しいのだ。親心？とかそういうものかもしれない。

彼にとってボクといる以外の選択肢はない。だけども、決して今不幸ではないのだと思えた。
自己満足かな。それでもいい。彼の笑顔を信じたいだけだから。

ななは幼く無邪気で優しい子供だった。たつは苦い経験がトラウマになっており、女の子であるななを避けてはいたが、ななはどうやら面食いでたつにぞっこんなようだった。

河原で落とした草履を拾おうと幼い子供が急な崖に身を乗り出す様をみて思わず助けに入ったそうだが、ななはその機会を逃さずにうまくたつの警戒を解いた。

たつのトラウマの原因も、悪意を持ってその結果を引き起こした訳では無い。ただ、幼い彼らではそれを取り巻く状況に勝てなかったというだけで。今は違う。たつもそれをわかっているから、ななを受け入れたのだろう。純粋なななの好意はまっすぐで暖かく、たつの心に届いた。

ななはたつに楽しい時間を、ボクにシロツメクサと感情の答え合わせをくれた。

しかし彼女がもたらしたのはそれだけではなかった。