I wanna dye you (ページ20)

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ボクが低い声で歌ったメロディを、たつは2度ほど聞いて再現して見せた。音程感覚がいいし無意識だろうけど綺麗なビブラートもかかってて、耳心地のいい声だ。

Y「じゃあ、せーので今の歌ってみて？…せーの、」

たつに教えた民謡の(ボクが今即興でつくった)下はもに小さく乗っかるように主旋律を歌う。

Y「…なかなか上手いやん。どう？綺麗やろ？これ、ハーモニーっていうねん。」

T「おん、すごい。はぁもにぃかー…やすはなんでも知ってるんやな！」

Y「何でもは知らんけどなw たつの声は、低いところがすごく綺麗に心地よく響く声やからハーモニーがええ感じになるわぁ。すばると3人で、歌ってみたいなー。」

T「…そーなん。おれはおれのこえよりやすの声のがすき。でも、すばる？と3人で歌って、もっと綺麗なんが聞けるんやったら、それは聞いてみたいかも。」

Y「ふふ、会えたらええな。」

なんともないようなこんな会話を、毎日毎日飽きることなく交わし続けた。ボクにとってはこんなに話をしていて楽しい相手は初めてで、たつと一緒にいる空気が暖かくて、安心していられる。

たつにとってはどうだろうか？

たつがボクといてくれるのはそれ以外の選択肢がないからだ。楽しそうに笑っていても、内心は気を使っているかもしれないし、もっと彼にとっていい環境はあるかもしれない。
時折そういう思考が脳裏をよぎる。だけれども考えても詮無いことだ。初めから全てボクの自己満の延長なのだから、そうやって割り切って、頭を振る。

しばらく一緒にいればたつの事もわかるようになってきた。彼は心にバリアを張っているようなものだ。育った環境からすれば奇跡だと思えるほど、彼は繊細で、優しい心根をしていて、それを傷つけられた経験から人との間にバリアを張り巡らす。

ボクに対しては、最初から相手は異形だからどうでもいいやという思いだったからか、そのバリアを全面に押し出すことはなく、過ごす時間を積み重ねるうちに心を自然に開いてくれている気がした。口元を抑えて含むような、ふふっという笑い方をしていた彼が最近は時折大きな口を開けてあっはっはと笑い転げることが増えた。

だけれども、村の人間に対しては彼はなかなか心を開かない。