I wanna dye you (ページ17)

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今…今、俺は…
不思議なもんだ。さっきまで考えるのを辞めたい、死にたいと思っていたのに、今を意識すると、浮かぶのは下らない欲求だ。

T「…お腹がすいたから、ご飯を食べたい。」

Y「ふはっ！せやな！飯食お！それから、服着替えて、せやなぁ、畑でも耕しに行こか。お隣さんにおはようって言うて、山に夕方用に薪を拾いに行こ。」

T「…うん。」

Y「そんなことだけでええねん。そんなこと繰り返すだけ。寝て、起きて、飯食って、働いて。そんで間に色々学んで。面白いこと見つけて、それを人に伝えておしゃべりして。そんだけ。そんだけで生きていけるから。」

T「…そんだけ？」

Y「おう、そんだけ。そんだけのこと、もう少し俺と一緒にしてくれる？」

T「…ええよ。」

きゅーけつきはニカッと笑った。俺もつられて笑った。手際よく飯を並べながら、きゅーけつきは俺に言った。

Y「お前、名前は？」

T「…名前は、ない。なんて呼ばれてたのかはもう忘れた。きっとあれは名前じゃないし。」

Y「ん、じゃあ俺がつけたる。んー、たつ、でどう？」

T「たつ？」

Y「そう。お前は今、やっと立ち上がったところやから。」

T「たつ…うん、たつ。俺の…名前。」

Y「そう。お前の名前。ええ名前やろ？たつ。」

T「うん。ええ名前や。」

T「お前はなんて呼んだらええの？」

Y「えっと…しんちゃんと日本にいた頃は…やす、やったかな？うん、確かそんな感じ。やすって呼んで。」

T「やす、な。分かった。」

俺は、正座に座り直して、両手を地面に着けた。人差し指と親指で三角を作り、そこに向かって真っ直ぐ頭を下げる。面の人に教えられた、最上級の礼。

T「やす。助けてくれてありがとう。よろしくお願いいたします。」

Y「うぇ？いやいや、改まらんでええから！！たつ？？」

顔を上げて、戸惑うやすを見る。こいつを見てると、自然と笑みが零れるのだ。
なんの根拠もない。ただの成り行きかもしれない。だけど、こいつが言うならとりあえず今死ぬのはやめとこうと思った。今日はとりあえず、生きようと。