・俺のことなんて side？ ページ16
俺は話し始めた。
俺に顔を見せたことの無い面の人のこと。教えられたこと。格子の外から来たあいつのこと。知らなかった世界のこと。突きつけられた現実。それでもういいと思ったということ。口に出してみればなんと短いことか。もう他にない。俺には本当にこれしかないのだ。
T「…こんだけ。ほんまに、こんだけ。」
Y「みっじかいな。」
T「…だから、俺にはなんもないねんて。お前が興味持つような話もないし、お前の経験以上のもんも持ってへん。あきたんやったら、もう殺してや。」
Y「生きたくないんか？」
T「生きてどうなんねん！？15年間も、なんも知らんとただ過ごして、15年の間に人が身につける力のうち俺はなんぼも身についてへんねんで！？自分で生きるすべも知らん！…前を向こうとしても、道のりが、長すぎる。どこまで見渡しても、俺にはなぁんも見えへんねん！」
視界が少し揺らいでる気がする。虚しい。苦しい。
すると吸血鬼は、俺の手をそっと掴んだ。
Y「だぁいじょおぶ。ボク、一緒にいたるから。」
T「…え？」
Y「ボクが一緒にいたる。決めた。お前が死ぬまで一緒にいる。」
T「なん…で？」
Y「ボク、これから何万年生きるかわからへんけど、お前せいぜい50年くらいやろ？あと生きても。それくらい、お前にあげてええわ。どうせ暫く力戻らんから、人間みたいに生きなあかんし。
なぁ、15年ただ過ごしただけって言うたな？ボクは、お前の何倍も生きてるけど、まだひとりぼっちやで？知らんことばっかりやし、見たことないことばっかり。世界の広さを突きつけられたらどこまでも広がって見える。そういうもんやで。誰だって、その広さに押しつぶされないように生きてんねん。それでもみんな大丈夫やねん。それでも生きれてる。お前は…大丈夫やから。先のことなんか見るな。今、お前は、どうしたい？」
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作者名：らむ倉 | 作成日時：2020年8月10日 0時
