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面「今年で15だな。おめでとう。今年がおまえを天狗に捧げる年だよ。100年に1度の、村を守るための年だ。おまえの命ひとつで村が守られる。誇りに思え。」
心の温度が下がっていくのを感じた。突きつけられた事実を脳が、心が咀嚼していく。
面の人は素顔を見せたことがない。おれができることが増えれば、必要ない手助けもしなくなった。最近は食事と本のみ届けるだけだ。なるほど、辻褄が合う。
怒ればいいのか、悲しめばいいのか分からない。Aには親がいて、家族がいて、愛されている。わたしは？同じ人間ですらないと？初めから死ぬ為だけに産まれてきたと？抱えきれないほどの事実と衝撃に打ちのめされたわたしは、なぜか冷静だった。
T「…100年前の記録が残っているのか？」
面「あ？」
T「100年前の天狗に聞いたのか？どんな子を持ってこいと？」
面「…文書が残っている。それに従っているだけだ。」
T「へぇ、そう。…俺はいつ天狗のとこ連れてかれるん？」
面「来週だ。無駄なことはするな。」
面の人はそう言い残して家を去った。
おれは寝台に寝転がった。
獣とおなじ、誰も愛さない、捧げるために育てられた…急に世界の全てが理不尽に感じた。
逃げようか？そうだ、簡単に殺されてたまるか。山に置いてかれたら、別の村まで走ってやる。そして、そこで…そこで、住処をみつけて、1人で生きる術をみつけて、人々に馴染んで…
できるのか？これまで15年も世話をされた生きてきた世界を知らないおれが？
T「…はぁ」
おれは目を閉じた。未来を考えれば考えるほど壁は高くなり、荷は重くなる。急に虚無感を感じた。どうせろくに生きられない。
T「まぁええか…」
話を聞いた感じでは、天狗のご機嫌を取ろうと不確かな情報でと推測で育てられただけなので、天狗の元で生きられる可能性も低い。
T「めんどくさいなぁ…どーせ生きてもひとり…生まれてきた時から、そうなってたんやったら、もう…もうええわ…」
最後に天狗と話はしてみたい。ここまで虚無感に包まれていてなお俺の好奇心は元気なようだ。最後まで付き合ってやろう。
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作者名：らむ倉 | 作成日時：2020年8月10日 0時
