10話 ページ10
「うーん、そろそろリハビリを始めてみませんか？最近は体調を崩すことなく過ごされているので、無理をしない程度に日程を組みましょう」
「分かりました！ありがとうございます」
そう言って笑いかけると、先生は安心したような微笑みを返してくれる。幼い頃から私を診ていたらしく、調子のいい私を見るといつも喜んでくれた。
だからだろう。今日は一段と安心しきったような顔をしている。先生は意外と直ぐに顔に出るのだ。
リハビリのスケジュールを決めながら、入院中の病院外への外出についての説明もされた。外出外泊の時は必ず許可が必要になること。
外出中に何かあった場合の対処など、いつもより長々と説明をされた。まだリハビリも始まっていないのに、少し気が早く感じられる。
病院側にとって、いち早く患者が退院できるよう尽力したいのだろう。それが、今は少し寂しく思ってしまった。
元気になるのは嬉しいことだが、ここに来て間もない「私」は病院にいる人たちがある種の家族のように思えていたからだ。
弟と早く暮らしたいのに、ここを離れるのが寂しいだなんて我儘にも程がある。だからこそ、一人一人の顔を忘れないように目に焼き付けた。
日を開けて見舞いに来た弟に、リハビリが始まることを伝えた。最初こそは驚いていたものの、段々それが喜びに変わっていった。
「姉さんは、退院したら何をしたい？」
何気ない世間話のようなものをしていたら、急にそんなことを聞かれた。これはどう答えるのが正解なのだろうか。
或いは正解なんてないのだろう。彼の真剣な眼差しは、何を期待しているのかは分からない。でも、これだけは忘れちゃいけないと思った。
「お父さんとお母さんのお墓参り、かな。ずっと寝たきりで、最近は全然行けていなかったから」
これは、きっとこの身体の持ち主である彼女が望んでいる事なのだと思う。弟はそう答える私に、嬉しそうで少し複雑そうな顔をする。
「……そうだね。元気になったよって、2人で報告しないと」
「うん。それが終わったら、貴方と2人で旅行とまではいかないけど、少し遠出もしてみたい。今まで何もしてあげられなかったから」
「そんなこと、気にしなくて良いんだ。僕は、姉さんが元気な姿を見せてくれるだけで嬉しくて、幸せだから」
「それでも、私は貴方との時間を大切にしたいの」
弟の顔にそっと手を添えると、上から手を重ねられた。少し、涙ぐんだ声で返事をする彼は愛おしく、尊い笑顔を向けてきた。
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月詠乃朱(プロフ) - 朝桐さん» いつもありがとうございます。朝桐さんもお気をつけて！ (2022年12月24日 11時) (
レス) id: 3679865769 (このIDを非表示/違反報告)
朝桐(プロフ) - 続編楽しみにしてます！年末年始、今年は特に寒いのでお体にお気をつけて！ (2022年12月23日 22時) (レス) @page50 id: db8064d0f2 (このIDを非表示/違反報告)
月詠乃朱(プロフ) - 朝桐さん» 秋山さんのストーリーも楽しんで貰えて何よりです。次回の更新、楽しみにしていてくださると嬉しいです( *´꒳`*) (2022年10月19日 23時) (レス) id: 3679865769 (このIDを非表示/違反報告)
朝桐(プロフ) - あ、秋山さーん？！？！？！ (2022年10月19日 23時) (レス) @page45 id: db8064d0f2 (このIDを非表示/違反報告)
月詠乃朱(プロフ) - アルジュマさん» コメントありがとうございます。そう言ってくださると嬉しいです(*^^*)キャストネームの方もありがとうございます。意味とかも調べながら検討したいと思います！ (2022年8月21日 22時) (レス) id: 3679865769 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月詠乃朱 | 作成日時：2021年7月31日 14時
