42話 ページ43
テレビを見ながら濡れた髪をタオルで拭いていると、家の扉を開ける音が聞こえてきた。
「ただいま、姉さん」
「おかえりなさい。ご飯はもう食べてきたんでしょ? お風呂わいてるから、ちゃんと体を温めなさいね」
「ありがとう」
リンドウは自分の部屋に向かって歩いて行った。私は濡れた髪をそのままにしてキッチンに行く。
棚に入れておいた紅茶の箱を取り出してテーブルの上に置いた。深緑色を基調とした上品なパッケージ。
病院で一人きりだった私には、紅茶は高級品のイメージが強かったのだが、コンビニに売っていて驚いたことがあった。
食べず嫌いではないけれど、自分の中に少なからずの抵抗感がある。実を言うと、昨日シンさんが紅茶を入れようとしてくれていたのに断ってしまったのだ。
そしたら、シンさんからこの紅茶をいただいた。柔らかい表情を浮かべながら、「リンドウと飲むと良い」と言われた。
「そういえば、昨日は世話を焼いてくれる人が多かったような……?」
朝出勤したときにはケイさんがつきっきりで仕事を見てくれていたし、昼休憩では黒曜さんがやたらと食べ物を進めてきたり、シンさんは暖かい飲み物を入れてくれようとしていた。
吉野さんはやろうとしていた仕事を手伝ってくれて、銀星さんは何度も事務室に様子を見に来てくれていた。
昨日はアレの日が来たばかりで調子が良くなかったから、気を遣ってくれていたのかもしれない。
「顔色が悪かったのかな」
そう呟くと、背後からリンドウが近付いてきた。
「もう上がったの?」
「うん。姉さんが待ってると思って。それより、顔色が悪かったって聞こえたけど、姉さん体調悪いの?」
髪の毛から水を滴らせ、リンドウは私が座っていた椅子と反対側にある椅子に座った。
「ううん、大丈夫。ちょっと仕事頑張りすぎちゃったのか、身体がだるいだけよ」
さすがに、弟相手に生理だからとは言えなかった。心配をしてくれているのか、顔を曇らせている。
「もしキツイ様なら、明日も休みをもらった方が……」
「大丈夫よ。身体がまだ環境に慣れていないだけだと思うから。それに、みんな頑張ってるのに私だけだるいからって休むのは気が引けるし」
「そっか。ならいいんだけど。シンから貰った紅茶ってそれ?」
「うん。私、紅茶の入れ方とかよくわからなくて」
そう言うとリンドウは薄く笑みを浮かべて「じゃあ、僕が入れるね」と立ち上がり、紅茶を入れる準備を始めた。
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月詠乃朱(プロフ) - 朝桐さん» いつもありがとうございます。朝桐さんもお気をつけて! (2022年12月24日 11時) (レス) id: 3679865769 (このIDを非表示/違反報告)
朝桐(プロフ) - 続編楽しみにしてます!年末年始、今年は特に寒いのでお体にお気をつけて! (2022年12月23日 22時) (レス) @page50 id: db8064d0f2 (このIDを非表示/違反報告)
月詠乃朱(プロフ) - 朝桐さん» 秋山さんのストーリーも楽しんで貰えて何よりです。次回の更新、楽しみにしていてくださると嬉しいです( *´꒳`*) (2022年10月19日 23時) (レス) id: 3679865769 (このIDを非表示/違反報告)
朝桐(プロフ) - あ、秋山さーん?!?!?! (2022年10月19日 23時) (レス) @page45 id: db8064d0f2 (このIDを非表示/違反報告)
月詠乃朱(プロフ) - アルジュマさん» コメントありがとうございます。そう言ってくださると嬉しいです(*^^*)キャストネームの方もありがとうございます。意味とかも調べながら検討したいと思います! (2022年8月21日 22時) (レス) id: 3679865769 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月詠乃朱 | 作成日時:2021年7月31日 14時