38話 ページ39
「はああ、疲れた......」
「お疲れ様、姉さん」
私の仕事が終わるのを休憩スペースで待ってくれていたリンドウが、水を差しだしてくれた。それを受け取り一口飲んでから、スターレスを出るための廊下を歩いた。
薄暗い廊下の中を、隣を歩くリンドウの気配を感じながら歩いている。たったそれだけで、一人じゃないのだと思わされた。
ここにどんな仲間がいて、どんな思いを持つ人がいるのかは大体聞いた。それでも、彼の、リンドウの本音を知ることはできない。
彼の心の奥底に踏み込むことができないでいる。穏やかな笑みを浮かべて、明日から参加することになる夏フェスのことを話すリンドウ。
今日一日、ここで過ごしていて分かったことは、この場所はあまりいい場所ではないということ。欲と絶望を誰もが持っている気がした。
こんな場所にいるリンドウも、きっと今も心のどこかで絶望をしているのだろう。そんな場所で自分を曲げない、曲げられないその姿を誰かは見守ってくれているのかな。
「姉さん、難しい顔してどうしたの？ 具合悪い？」
「......ふふ、心配してくれてありがとう。ただ明日からの仕事がちょっと不安なだけで、体調は悪くないわ」
「それならいいんだけど......あんまり無理をしないで、頼れるときは頼って。僕も、運営くんも、他のみんなだってきっと力を貸してくれると思うから」
「そうね、無理だけはしないように約束するわ。大切なあなたを不安がらせてはいけないものね......」
最後はぽつりと、リンドウに聞こえるか聞こえないかの声量で言った。リンドウは不思議そうに笑うけれど、深追いはしてこない。
この言葉を、私の本心であるように繰り返す。「大切なあなたを不安がらせてはいけない」と、忘れないように胸の奥に刻み込んだ。
スターレスを出て、この時間は賑やかな繁華街の中をリンドウに手を引かれ歩いていく。
「リンドウ、明日からの夏フェス大変だろうけど頑張ってね。私もお仕事に早く慣れるように頑張るから」
「もちろん。明日は姉さんより先に起きるけど、寝てていいからね」
「分かってるわよ。今日の疲れを十分に癒して、仕事へ行くようにするわ」
「約束ですよ？」
リンドウは私の手を強く握りしめた。相変わらず距離が近いのね......
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月詠乃朱(プロフ) - 朝桐さん» いつもありがとうございます。朝桐さんもお気をつけて！ (2022年12月24日 11時) (
レス) id: 3679865769 (このIDを非表示/違反報告)
朝桐(プロフ) - 続編楽しみにしてます！年末年始、今年は特に寒いのでお体にお気をつけて！ (2022年12月23日 22時) (レス) @page50 id: db8064d0f2 (このIDを非表示/違反報告)
月詠乃朱(プロフ) - 朝桐さん» 秋山さんのストーリーも楽しんで貰えて何よりです。次回の更新、楽しみにしていてくださると嬉しいです( *´꒳`*) (2022年10月19日 23時) (レス) id: 3679865769 (このIDを非表示/違反報告)
朝桐(プロフ) - あ、秋山さーん？！？！？！ (2022年10月19日 23時) (レス) @page45 id: db8064d0f2 (このIDを非表示/違反報告)
月詠乃朱(プロフ) - アルジュマさん» コメントありがとうございます。そう言ってくださると嬉しいです(*^^*)キャストネームの方もありがとうございます。意味とかも調べながら検討したいと思います！ (2022年8月21日 22時) (レス) id: 3679865769 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月詠乃朱 | 作成日時：2021年7月31日 14時
