25話 ページ25
セミが頭の中で鳴いているような感覚だ。ずっと開けられなった扉が、ゆっくり開いていく。見えてくるのは、「私」の記憶。
まだ動き回れる元気があった頃、入院していた病院に秋山ましろと言う看護実習生がやってきた。その名前、その姿を目にした時、体に衝撃が走った。
私より少し大人びてはいたが、そこには私自身が佇んでいたからだ。私自身とは、あくまで比喩である。そこに私が立っていた訳でも、鏡が置かれていた訳でもない。
「秋山ましろ」と言う、私とは別の人がそこに居たのだ。その光景は、当時の私の生涯において1番驚かされた瞬間だった。
「美輝さん、少し涼しい場所に移動しませんか？顔色があまり良くないので」
「＿＿＿分かりました。すみませんご迷惑をかけて」
「いえ、迷惑だなんて思っていません。駐車場にエンジンをかけたまま車を停めてあるので、そこでも大丈夫ですか？」
「はい、ありがとうございます」
秋山さんに体を支えてもらいながら歩いていく。少し足が震えていたためにふらつきながら、明るく声をかけてくれる秋山さんを見上げた。
前よりかは笑うようになったと思う。看護実習なんて何年前の話だったか。実習が終わった後も私のお見舞いに何度か足を運んでくれて、卒業しても手紙のやり取りをしていた。
何で今まで気が付かなかったんだろう。名前も容姿も瓜二つ。ドッペルゲンガーに会ったかのような、不思議な気持ちで一緒に居た。
病院でも双子と間違われたりしたっけ。懐かしいな。そんな事を考えながら、駐車場に着くと秋山さんの車に乗せられた。
まだ整理しきれていない記憶もあるが、それは帰ってから順を追って思い出そう。この体が私の記憶を受け入れ始めているような気がした。
「美輝さんの体調も悪そうなので家まで送りますよ」
「いえ、大丈夫です。少し暑いところに居すぎて疲れただけなので少し休めば治ります！それより、さっき言っていた喫茶店に行きませんか？」
「私は別に構いませんが、更に悪くなるようだったら言ってくださいね。途中コンビニに寄りたいんですけど、良いですか？」
「はい、大丈夫です。わがまま言ってすみません」
「わがままだなんて全然思っていませんし、寧ろ嬉しいです。こういう風に、誰かとお出掛けってあんまりしてこなかったから」
そう言って秋山さんは、はにかむように笑った。彼女の隣は、例えるならば実家に居るような安心感だった。と言っても、「私」には家族と呼べる者はいなかったが。
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月詠乃朱(プロフ) - 朝桐さん» いつもありがとうございます。朝桐さんもお気をつけて！ (2022年12月24日 11時) (
レス) id: 3679865769 (このIDを非表示/違反報告)
朝桐(プロフ) - 続編楽しみにしてます！年末年始、今年は特に寒いのでお体にお気をつけて！ (2022年12月23日 22時) (レス) @page50 id: db8064d0f2 (このIDを非表示/違反報告)
月詠乃朱(プロフ) - 朝桐さん» 秋山さんのストーリーも楽しんで貰えて何よりです。次回の更新、楽しみにしていてくださると嬉しいです( *´꒳`*) (2022年10月19日 23時) (レス) id: 3679865769 (このIDを非表示/違反報告)
朝桐(プロフ) - あ、秋山さーん？！？！？！ (2022年10月19日 23時) (レス) @page45 id: db8064d0f2 (このIDを非表示/違反報告)
月詠乃朱(プロフ) - アルジュマさん» コメントありがとうございます。そう言ってくださると嬉しいです(*^^*)キャストネームの方もありがとうございます。意味とかも調べながら検討したいと思います！ (2022年8月21日 22時) (レス) id: 3679865769 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月詠乃朱 | 作成日時：2021年7月31日 14時
