3話 ページ3
夢を見た。周りは真っ暗で何も見えない世界。だけど、自身の体ははっきりと見える不思議な空間に「私」が佇んでいた。
終わりの無い暗闇の中を、ただぼうっと見つめている。すると、目の前に淡い緑色の光を放つ何かがぼんやりと現れたのだ。
実態のない、光そのものと言えば分かりやすいだろうか。何だか不気味なまでに綺麗な色をしていた。その色が彼の色によく似ていた。
「私の中に入ってくれてありがとう」
その光が「私」に話しかけてきた。か細い声の割にはすんなり耳に入ってくる言葉に、何だか悲しくなってしまい涙を零す。
この光は魂なのだろう。私が入り込んでしまった体の、本物の魂。
「貴方のおかげで、あの子を独りにしないで済んだ。私はもう一緒にいてあげられない」
「どうして？」
「体と魂を完全に切り離されてしまったの。完治するのと引き換えに。神様が、私に最後の願いを叶えてくれるって行ったの」
「神様？それに願いって何なの？」
私が聞き返すと、黙り込んでしまった。何かに迷っているのか、それとも言えないことがあるのか。
「弟と一緒に過ごしてあげたかった。だけど、体はどんどん私を蝕んで言うことを聞かなかった。だから、治してってお願いをした。私の魂と引き換えに……」
「なに、それ……それじゃあ意味ないじゃない！」
「神様は、哀れな少女に生きることの幸せを与えたい。私は、弟を独りにしたくない。だから、魂を差し出したの。私は死んでもいいから」
「どうしてそんな事…」
「治癒することって、簡単なことじゃないの。何年も何十年もかけて、結局死んでしまうことだってある。それを短時間で治すのだから、これくらいの代償が無いとね…」
代償と言う言葉が、私に重く伸し掛る。彼女の命の引き換えに、私に与えられた自由の可能性。神様は不公平だと思う。
どんなに我慢をしても苦しくて、死にたいと願い始めた私には重責だった。命を軽んじる私達は生きる資格など無いだろうに。
どんなに家族が大切でも、簡単に手放してしまう命に価値など有るのだろうか。足元から来るおぞましい何かが、私の背中に張り付いてくる。
「それじゃあ、私は何をすればいいの？」
「何も。弟の傍に居てあげるだけでいい。他は自由にしても文句は言わないから」
「本当に、それだけでいいの？」
「うん。後は貴方が長生きしてくれれば、それでいい」
「…分かった。約束する」
「ありがとう」
最後は泣きそうな声で消えていった。
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月詠乃朱(プロフ) - 朝桐さん» いつもありがとうございます。朝桐さんもお気をつけて！ (2022年12月24日 11時) (
レス) id: 3679865769 (このIDを非表示/違反報告)
朝桐(プロフ) - 続編楽しみにしてます！年末年始、今年は特に寒いのでお体にお気をつけて！ (2022年12月23日 22時) (レス) @page50 id: db8064d0f2 (このIDを非表示/違反報告)
月詠乃朱(プロフ) - 朝桐さん» 秋山さんのストーリーも楽しんで貰えて何よりです。次回の更新、楽しみにしていてくださると嬉しいです( *´꒳`*) (2022年10月19日 23時) (レス) id: 3679865769 (このIDを非表示/違反報告)
朝桐(プロフ) - あ、秋山さーん？！？！？！ (2022年10月19日 23時) (レス) @page45 id: db8064d0f2 (このIDを非表示/違反報告)
月詠乃朱(プロフ) - アルジュマさん» コメントありがとうございます。そう言ってくださると嬉しいです(*^^*)キャストネームの方もありがとうございます。意味とかも調べながら検討したいと思います！ (2022年8月21日 22時) (レス) id: 3679865769 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月詠乃朱 | 作成日時：2021年7月31日 14時
