18話 ページ18
私には弟が何に不安を感じているのかが分からずにいた。秋山さんに伝えられた時から、何となく会話が途切れると気まずい雰囲気が流れる。
気にかけてはいるが、弟の言葉からは何を思っているのかが分からない。それもそうだ。弟にとっては22年間共に生きてきた家族。
でも、「私」にとっては2ヶ月も経っていない家族なのだ。普通なら感じ取れるであろう顔色や言葉遣いの違和感は微塵も感じとれなかった。
その現実が妙に私の胸を締め付けた。私は本当にこの子と共に過ごしていけるのだろうか。今まで通りが私には無いのだから、出来ないかもしれない。
もしかしたら本当の私ではないと気付かれて、悲しませてしまうかもしれない。そう言った不安が、じわじわと心の中を埋めつくしていく。
段々と弟の顔を見るのが怖くなり、静かに俯いた。目に映る自分の手が僅かだが震えているように見える。
「姉さん、顔色が悪くなってる。少し横になって休もう？」
「う、うん。ごめんね」
「大丈夫だよ。だから、謝らないで」
私の身体を抱き締めるように、優しく背中に腕を当てて支えてくれた。震え始めた体を動かしながら、ゆっくりとベッドに横になる。
一度嫌な事を考え始めると、思考は止まることを知らない。押し寄せてくる波のように、不安と言うような、恐怖と言うようなそれぞれの感情が溢れそうになった。
すると弟が手を伸ばし、私の髪に触れる感触。優しくてどこか躊躇いがあるような手つきが私の涙腺を刺激した。
思考と同じだ。一度溢れると、それを伝ってまた新しいものが流れゆく。感情が上手くコントロール出来ずにいた。
「姉さん、僕はできることなら傍を離れたくない。でも、それだといつか訪れるかもしれない未来を壊してしまっているような気分になるんだ。
姉さんに自分が一緒に居たい人と思う人ができたなら僕は喜んでお祝いする。だから、それまでは、僕から離れないでいて欲しい」
強い眼差しで、真っ直ぐ私を見つめながらそういう弟。そこで漸く、弟が何に悩んでいたのかを理解することができた。
もし、私に別の新しい家族が出来たら弟とは一緒に居られない。弟の家族が、居場所がなくなってしまうという不安がきっとあったのだろう。
今の私と同じ気がした。もし「私」が私で無いことに気付かれてしまえば居場所を失ってしまうかもしれない。
互いに、家族の枠組みの中にテリトリーができてしまう恐怖があったのだ。
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月詠乃朱(プロフ) - 朝桐さん» いつもありがとうございます。朝桐さんもお気をつけて！ (2022年12月24日 11時) (
レス) id: 3679865769 (このIDを非表示/違反報告)
朝桐(プロフ) - 続編楽しみにしてます！年末年始、今年は特に寒いのでお体にお気をつけて！ (2022年12月23日 22時) (レス) @page50 id: db8064d0f2 (このIDを非表示/違反報告)
月詠乃朱(プロフ) - 朝桐さん» 秋山さんのストーリーも楽しんで貰えて何よりです。次回の更新、楽しみにしていてくださると嬉しいです( *´꒳`*) (2022年10月19日 23時) (レス) id: 3679865769 (このIDを非表示/違反報告)
朝桐(プロフ) - あ、秋山さーん？！？！？！ (2022年10月19日 23時) (レス) @page45 id: db8064d0f2 (このIDを非表示/違反報告)
月詠乃朱(プロフ) - アルジュマさん» コメントありがとうございます。そう言ってくださると嬉しいです(*^^*)キャストネームの方もありがとうございます。意味とかも調べながら検討したいと思います！ (2022年8月21日 22時) (レス) id: 3679865769 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月詠乃朱 | 作成日時：2021年7月31日 14時
