15話 ページ15
部屋に響く紙どうしが擦れる音。一つ一つ丁寧に折っていくと、それは1つのトンボになった。ベッドに備え付けられた机には、色とりどりの折り紙が散らばっている。
手持ち無沙汰になっていた所に、秋山さんから小児病棟で使う秋に関係するものをいくつか折って欲しいと頼まれたのだ。
看護師でも保育士でもない私に頼んできたのは不思議だったが、お陰で暇潰しができるので良いかと思って引き受けた。
これから夏に向かっていくのに秋の物なのも不思議に思っているが。秋山さんが調べて持ってきてきてくれた折り方を参考にしつつ手を動かしていく。
折り紙自体はこの身体に入る前に何種類も折ったことがあり、この身体も何回か折っていた記憶があるため手は全て理解しているように動いていく。
ふわり
開放していた窓から1つの風が入り込み、未使用の紙がはらはらと宙を舞う。スカートのようにはためくカーテンが静まると、紙は床へと散っていった。
落ちた紙を拾いあげようと、ベッドの端に手を掛けて立ち上がる。最初こそフラ着いたが、しっかりとバランスを保ちゆっくり歩いてしゃがみ込んだ。
紙を拾おうと手を伸ばすと、病室の扉が急に開け放たれた。扉の先には見た事のないブロンドヘアーに青い瞳の青年が佇んでいた。
「えっと……何方でしょうか？誰かのお見舞いに来た方ですか？」
「いや、突然の訪問申し訳ない。俺はスターレスというショーレストランででキャストをしているケイという」
「あ、はい。美輝です。ショーレストランと言う事は弟のお知り合いの方ですか？」
「ああ。それよりも落ちている紙を拾う所なのでは無いのか？手伝おう」
「え？あ、ありがとうございます」
一見変わった口調で話すケイさんは、部屋のあちこちに散らばった折り紙を拾ってくれた。急に現れた彼に戸惑いながらも、落ちた紙を拾い終わるとベットに腰掛ける。
彼は私が腰かける時に手を貸してくれた。記憶を探っても私は彼を知らない。何でいきなり、彼は私を訪ねてきたのだろうか。
「リンドウから容態が落ち着いたと聞いたのでな。少し話がしたいと思って来たのだ。少し時間を貰っても良いだろうか？」
「構いませんよ」
「ありがとう。今度、君をスターレスへ招待したいのだ。もし機会があれば1度来て欲しい」
「スターレスへ？私、ショーレストランには1度も行ったことが無くて……」
「リンドウと来てくれても構わない。その時は特別な席を用意しよう」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 19人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月詠乃朱(プロフ) - 朝桐さん» いつもありがとうございます。朝桐さんもお気をつけて！ (2022年12月24日 11時) (
レス) id: 3679865769 (このIDを非表示/違反報告)
朝桐(プロフ) - 続編楽しみにしてます！年末年始、今年は特に寒いのでお体にお気をつけて！ (2022年12月23日 22時) (レス) @page50 id: db8064d0f2 (このIDを非表示/違反報告)
月詠乃朱(プロフ) - 朝桐さん» 秋山さんのストーリーも楽しんで貰えて何よりです。次回の更新、楽しみにしていてくださると嬉しいです( *´꒳`*) (2022年10月19日 23時) (レス) id: 3679865769 (このIDを非表示/違反報告)
朝桐(プロフ) - あ、秋山さーん？！？！？！ (2022年10月19日 23時) (レス) @page45 id: db8064d0f2 (このIDを非表示/違反報告)
月詠乃朱(プロフ) - アルジュマさん» コメントありがとうございます。そう言ってくださると嬉しいです(*^^*)キャストネームの方もありがとうございます。意味とかも調べながら検討したいと思います！ (2022年8月21日 22時) (レス) id: 3679865769 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：月詠乃朱 | 作成日時：2021年7月31日 14時
