82色目 ページ33
その阻まれるものにはじき返されて重傷寄りの中傷にまで悪化しちまってと厚は項垂れる
「今からお前たちが隠された後の出来事を全部話す…乱たちが向こうに行っていたってのは全員知ってるよな？」
「耳にタコができるくらい聞かされたからねぇ」
そう言う鯰尾に乱は一瞬ぷくりと頬を膨らませてから話し始める
Aが見習いとしてこの本丸にきたこと、あの人を追い出して皆を救ってくれようと動いてくれたこと、皆Aを主だと認めて慕っていること、あの人に酷いことされて蔵に閉じ込められたことやその後のこと、ずっと姿が見えない男士たちのことを慮っていること
悪い人じゃない、とても優しくていい人なんだという思いをありったけ込めて説明する
「…お前たちの中に…主の霊力が流れているだろう」
「温かいでしょ？優しいでしょ?」
「っ…はい、とても…温かくて…」
「優しい霊力です」
あの人…自分たちを鍛刀して顕現し…酷いことしかしなかったあの人とは比べものにならないくらい優しくて温かい霊力が自分の内に流れているのを感じ取る
「ぼ、僕…お会い…したい…です…」
「鳴狐もお会いしたいとそう、申しております」
「…うん」
「うん!主さんもう起きてると思うから呼んでくるね!」
その言葉に一瞬え!?呼んでくる!?と寝ていた全員がサーッと顔を青くさせるが、乱はもう出ていってしまっていた
「ははっ、大丈夫だぞ皆ｗｗ」
「何笑ってるんだよ薬研…って、骨喰もっ」
その顔を見た薬研がハハッと声を上げて笑っているのを鯰尾が眉を寄せてツッコむが、横の骨喰も肩を震わせていた
「大将をここに呼びつけて大丈夫なのかって顔してたからさ」
呼ばなくてもきっと来たぜ?寧ろ呼んでくれてありがとうって言うだろうな
確かにな
と二人で納得しているのを短刀たちはポカンとして見ていた
「主さん連れてきたよー」
『皆目が覚めてよかった、ここの審神者になりました…優癒子です…痛いところはない?』
乱に手を引かれて入ってきたのはどう見ても優しそうなお姉さん
この人が乱が耳にタコができるくらい話していた人物
「我々の手入れをしてくださり誠にありがとうございます、鳴狐もそう申しております」
「あっ、ありがとう、ございます」
鳴狐の言葉を皮切りに次々とAにお礼を言っていく
『そんな、お礼なんていいんだよ…普通のことなんだから』
皆見つかって、傷が治せてよかったと優しく笑いかけてくれる目の前の人は…本当に温かくて
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作者名：べっこうあめ | 作成日時：2021年11月14日 14時
