2人分しかないのは ページ31
おそらく冬花さんが用意したのであろう良い香りのする茶葉で紅茶をいれながら「そういえば太陽、そこに凄い積んである教科書ってどうしたの？」と先ほどから気になっていたことを尋ねてみる。
「……………あっA、ライチティーにしちゃったの？僕それ苦手だなあーー僕の分はピーチにしてほしいなあー…」
「そんなこと言ったってめんどくさいんだけど…しかももう太陽の分いれちゃったよ」
「Aのカップいれてないでしょ？僕そっち使うから！ねーお願いA」
「うーん…まあ別にいいけど」
我慢しろと言おうか迷ったが、退院の決まった席で揉めたくないのと棚にもう一つティーポットを発見したので了承した。ライチもピーチも香り違うだけで大して味変わらないと思うんだけど…。
「それで話飛んだけど太陽、そこの教科書って」
「ブラウニー、俺のやつの方が大きくなっちゃったんだけどいい？A…」
「え？あ、うん。私は文化祭試食で食べたし全然いいよ。で、そこの教科書ってもしかして冬花さんから勉強のためにわたさ、」
「そういえばA、髪切った？」
「切ってないよ……」
薄々、太陽の意図に気づいてげんなりした。そして話の逸らし方がだんだん雑になってきてる気が。
「あら、Aちゃんいらっしゃい」
「げ」
「あ、冬花さん」
本の束を大量に抱えた冬花さんがドアから顔を出す。紅茶の匂いに気がついたようで「良い香りね」と綺麗に笑った。
「冬花さんもいかがですか？」
「カップもう無いよ」
「ふふ、気持ちだけ貰っておくわね。ここには太陽くんのとAちゃんのカップしか無いもの」
「えー太陽ケチいなー」
「どこが」
冬花さんの持ってきた本に嫌な顔をする太陽を横目に冬花さんは「そう、Aちゃんが来たら頼もうと思っていたの」と私に向き合った。
「退院の話、もう聞いたと思うんだけど、実は太陽くん勉強が出来ないのね」
「そんなはっきり言わなくてもいいと思うんだけどね」
「そうなんですか…」
「それで勉強を教えてもらいたいの。暇なときでいいんだけど」
どれくらいできないの？と聞くと「……ホラ、僕ずっと入院してたから」と目を逸らしながら言われた。要するにどこまで習ったか全くわからないので苦手範囲もわからないらしい。……重傷だと思うんだけど…。
これから勉強道具持ってくるからね、と言うとあからさまに嫌な顔をされた。顔に出やすいなあ。
ラッキーアイテム
革ベルト
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キャンプ - 思い出しては読み返す大切な作品です。私事ですが拙作ばかりですが文字書きとして活動しています。想像を文字に起こすことは楽しいです。私も、定期的に読みに来てしまうような誰かの心に残る作品を書けたらと、初心を思い返すような気持ちでここに戻ってきます。 (2022年10月18日 0時) (
レス) id: 0d3ae99a04 (このIDを非表示/違反報告)
鯖 - 小学生のころkurehaさんの小説に出会って、10年以上何度も読み返しています。作品を残しておいてくださって、ありがとうございます。完結していなくても、私の中ではまだこのアリスの世界が続いている気がします。大好きです (2021年3月14日 17時) (レス) id: 5fb21310e9 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロ - キャップさん» 私も大学生になりました。もう占いツクールに没頭するような歳ではなく大人になりましたがシエラザートとアリスは今でも大好きな作品です。 (2020年9月17日 14時) (レス) id: 2790829628 (このIDを非表示/違反報告)
キャップ - 菊華さん» 大学生になりました。ふとしたときに思い出して読み返す作品です。ずっと好きです。一年前、残したメッセージがそのままで笑ってしまいました。勝手にお世話になってます。ありがとうございます (2020年7月30日 1時) (レス) id: 0d3ae99a04 (このIDを非表示/違反報告)
キャップ - 今もずっと大好きな作品です。気がつけば五年経っていますが、何度も、楽しく読ませてもらっています。ありがとうございます。 (2019年8月17日 17時) (レス) id: 1d4f5f1e49 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kureha | 作成日時：2012年7月1日 17時
