無常 ページ46
そう言い切って泣きながら頭を下げたAにゼンたちは優しく微笑んだ。
「なーにしおらしくなってんだよ、A!お前らしくないぞ!」
「ぎゃっ、お、王子に叩かれた…」
「A!私は、貴女とこれからも、共にいたいよ…!」
「白雪…!うん、ありがとう…っ私もだよ…」
「Aは無理をしがちだからなあ、俺たちがちゃんと見ていないとな」
「ふふ、もう、無理しないよ。ミツヒデさん」
「これからはちゃんと私たちも頼るんだよ」
「き、木々さん〜…っ!うん、お願いします…!」
「……A」
「……オビさん」
私がこれから進む道。その先には彼らが待っていてくれている。
何もなかった私に、存在を与えてくれた彼ら。
私は、何を返せるだろうか。
…その答えは、これからゆっくり見つけていけばいい。
人知れず絵本の最後のページに文字が書き加えられていた。
____存在を与えられた少女
____生き方を見つけた少女
____大切なものを知った少女
____最後まで諦めなかった少女に
____幸あらんことを。
▽△
「オービーさん!」
Aはいつものように、バルコニーに肘をつく彼のもとへ駆け寄る。どうやら木々と話していたらしい彼は、その姿を認め目を丸くした。
「どうしたの?今日はアンタ休みだって聞いてたんだけど」
「だからこそですよ!またアタックしにきました!」
そうあっけらんかんという彼女に二人は呆れたような溜息をつく。またか、という言外に含まれたそれにAは頬を膨らました。
「ちょ、何ですかその反応!」
「懲りないねえ、アンタも」
「悪いけどA、それ、私がいないところでやってくれない」
「木々さんまで…!」
私の味方はいないのか、そう嘆けばもともといないじゃんと最もなことを言われる。そういえば彼に好きだといった時からAの味方は白雪しかいなかったと思い出した。
「で?今日は何してくれんの」
「……これも、最後です」
「ん?」
「好きです、オビさん」
透き通る声で、Aは好意を口にした。
彼は森で言った、私に好意を示さないと。…それが、私を存在させるための優しい決断だと知っている。
でもこれが最後、いつか言っていたように不憫なままじゃ可哀想だから。彼はまた優しく頷いてくれるだけでいい。そう思っていた。
「…そ?…俺もだよ」
「…え?」
やっとのこと発した言葉は掠れていて、それでも彼は面白そうに笑った。
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紗夜(プロフ) - 何回も読んで、もう文章覚えてきたけど、大好き。 (2020年1月3日 1時) (レス) id: 17bb863b6a (このIDを非表示/違反報告)
フルリ(プロフ) - Hinanoさん» こちらこそコメントありがとうございます!!!キュンキュンして頂けたでしょうか!?そう言って頂けて嬉しい限りです...ぜひとも続編もよろしくお願いします! (2019年7月30日 13時) (レス) id: d10d29f4b8 (このIDを非表示/違反報告)
Hinano(プロフ) - 本当に本当に本当に素敵なお話でした…吹き出しちゃうくらい面白くて、でもきゅんきゅんして…素敵な時間をどうもありがとうございました! (2018年6月25日 7時) (レス) id: 853b5b9878 (このIDを非表示/違反報告)
フルリ(プロフ) - ちぎょさん» ちぎょさん、コメントありがとうございます!割と本気で泣きそうになりました!笑私も赤髪のキャラ皆好きで、個性を大切にしたいと思っていたので、そう言って頂けて本当に嬉しいです。こちらこそ、沢山のお言葉にとても励まされました!リクエスト、待っています!笑 (2018年4月29日 19時) (レス) id: b6276197f5 (このIDを非表示/違反報告)
ちぎょ(プロフ) - すみませんふざけましたが本当に。直接伝えたいなあ、こんなに素晴らしいお話を書いてくれてありがとうございました!!続編のリクエスト、ちょっとじっくり考えます笑。長々とすみませんでした。 (2018年4月29日 13時) (レス) id: 2a62607b53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フルリ | 作成日時:2018年4月16日 9時